2011 Fiscal Year Annual Research Report
金融機関の株式保有規制-private benefit論の応用と発展
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22730067
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
得津 晶 北海道大学, 大学院・法学研究科, 准教授 (30376389)
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Keywords | 金融法 / 銀行法 / 会社法 / 株式所有構造 / private benefit / 国際情報交換 / アメリカ |
Research Abstract |
本年度は、米国Stanford Law Schoolを拠点として、前年度の各種の広義の銀行規制の検討成果から、(1)Private benefit論一般への示唆、(2)法学方法論への示唆の獲得を行った。Private Benefitへの示唆として、業法規制が、健全性確保等の金融法固有の問題を超え、株主としてのprivate benefit抑止となるという前年成果から、比較法対象となるアメリカを中心に、その他、ドイツ、新興国(ブラジルなど)を検討した。効率的な株式所有構造となるような金融機関のprivate benefit規制の基準を求める中で、株式所有構造と金融規制との関連性を発見しつつも、Gilson教授との打ち合わせを経て、この両者のみに着目することの危うさを強く認識した。各国の政治的風潮(社会民主主義)やlegal originなどが、金融規制と株式所有構造に影響しつつも、植民地国の旧宗主国の統治方式、労働規制、独裁国家における政策決定等も含めて相互に影響しあうため、金融機関規制のみに着目して定量的・定性的な基準を導くことは不可能であるとした。その根拠を、private benefit論はequityによる投資のみを殊更特別に扱う枠組みであるところ、equityといっても資金の一拠出手段に過ぎず、様々な形でのdebtによる投資、労働者による人的資本の投資、取引関係による関係特殊的投資などがあり、どれが経済にとって重要であるかは、各国固有の歴史的経緯に依存する点に求めた。他方で、どのような形の(広義の)投資であっても拠出者が信頼して資金・資本の拠出ができるための受け手によるコミットメント(credible commitment)が必要であるということを導き、今後は、この観点から分析を進めていくことになる。法学方法論としては、あくまでも、経済成長を中心とした利益衡量論を前提としつつも、従前の株式市場を中心とした効率性基準の外側にdebtや労働市場も加えた広義の市場を考えることで、より柔軟な効率性に基づく議論が可能になることを導いた。
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Research Products
(4 results)