2010 Fiscal Year Annual Research Report
持続可能な廃棄物管理政策と情報の役割に関する理論・実証研究
Project/Area Number |
22730202
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
福山 博文 鹿児島大学, 法学部, 准教授 (40409537)
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Keywords | 廃棄物行政 / 途上国の廃棄物処理 / インフォーマル部門のリサイクル / ゴミ集積所の立地問題 / 人口移動 |
Research Abstract |
今年度は,現在,ゴミ問題が先進国以上に深刻になっている途上国における廃棄物行政および先進国の支援のあり方について,以下の2つのテーマについて研究を行った。まず,1点目は昨年度から引き続き研究を行っているインフォーマルセクターによるリサイクル行動をハリス=トダロ・モデルに導入した上で,途上国の失業問題および廃棄物処理問題を解決するための政策手段を考察した研究である。本研究により,インフォーマルセクターへの支援は失業者数を増大させ社会厚生を悪化させるのに対し,フォーマルなリサイクル部門を成長させるような政策は失業者数を減少させ社会厚生を改善することを示した。 2点目は,ゴミ集積所を都市部に立地させた場合に外部不経済が生じることを仮定した上で,ゴミ集積所の最適な立地問題について分析した研究である。都市部への人口集中が続いている途上国において,都市部にゴミ集積所を立地させた場合,悪臭や土壌汚染などの環境汚染が生じ健康に害を生じるリスクが高まるため,住環境は都市部よりも農村部の方が良いかもしれない。一方で,ゴミ集積所を都市部に立地させた場合,都市部の失業者はゴミ集積所から有価物を取り出してリサイクル業者に売却することで生計を立てることができるため,ゴミ集積所が都市部にある方が都市失業者の効用を高める可能性がある。本研究により,最終財部門およびゴミ収集部門の労働需要は都市部にゴミ集積所がある場合の方が大きいが,中間財部門の労働需要は農村部にゴミ集積所がある場合の方が大きくなることを示した、また,都市部にゴミ集積所がある場合には,都市環境が改善されると失業者数が増大してしまうことから,途上国政府は中間財部門および最終財部門の労働需要を高める必要があることを明らかにした。この分析結果は,途上国政府の政策および先進国政府の支援のあり方について政策的インプリケーションを与えるものである。
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