2011 Fiscal Year Annual Research Report
経済学的インセンティブに基づいた省エネルギー行動促進政策の検討
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22730217
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Research Institution | Matsuyama University |
Principal Investigator |
溝渕 健一 松山大学, 経済学部, 准教授 (90510066)
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Keywords | 省エネ / 家庭 / インセンティブ / 環境政策 / 節電 |
Research Abstract |
平成23年度は、前半は、前年度に実施した準備実験から得られたデータを分析し、インセンティブに一定の効果があることを示すことが出来た。分析結果は、2011年9月に関西学院大学で開催された「環境科学会年次大会」のシンポジウムセッション(環境規制の政策評価:経済学的アプローチ)において報告を行った。また、日本国内での同様の取り組みも含めて、インセンティブを利用した、家庭の節電促進方法を提案した論文が、「環境経済・政策研究」に掲載された。さらに、前年度実験の結果を詳細に分析してまとめた論文も、現在、英文ジャーナルに投稿中(リバイズ修正中)である。以上の研究を進めつつ、年度後半には節電フィール実験(本実験)を実施。236世帯を対象に、2011年10月と11月の2か月間の電気使用量が、前年同月比で1%削減することに200円のインセンティブを設定した。このようなインセンティブの設定は、家庭ごとに節電の難しさが異なる現実を考慮すると、効率的な節電方法と考えられる。実験の結果として、インセンティブを付けた方が、インセンティブを付けないグループよりも、節電率が統計的に有意に高かった(約4%)。この結果は、気候変動緩和や電力不足への対応策として、一定の効果をもたらすものを期待される。これらの研究結果は、平成24年度の6月23、24日に北海道大学で開催される「日本経済学会春季大会」と、同27~30日にチェコのプラハで開催される「ヨーロッパ環境資源経済学会(EAERE)年次大会」において報告予定である。また、現在、英文ジャーナルへも投稿中である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度の準備実験の結果をもとに、設定を改良し、本年度は、前年同月比1%節電につき200円という、インセンティブ設定における、節電行動促進のフィールド実験を行い、一定の効果を得ることができた。1%200円というインセンティブ設定は、需要抑制策としては、効率的な方法といえるが、その一方で、必要な財源の上限がないため、現状では、気候変動緩和という長期的な対策より、ピーク時電力需要抑制のような短期的な対策向きであるといえる。実際の政策(特に長期政策)として考える場合、もう少しこのあたりを考慮した設計が必要である。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、3回目のフィールド実験として、昨年までのインセンティブ効果の検証に加え、「目標設定」の効果についても検証する。ここで、すべての家庭に一定の目標水準まで削減させることは、限界費用が異なることを考慮すると効率的な対策ではない。そこで、ここでの「目標設定」は任意とし、さらに、インセンティブを加えた場合にどの程度の効果を持つのかを検証する。また、今回は「5%程度の節電目標」という比較的低めの目標とし、できるだけ多くの家庭が達成するための方法を検証することに目的とする。
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Research Products
(2 results)