2011 Fiscal Year Annual Research Report
途上国のマクロショックに対するセーフティネットの課題
Project/Area Number |
22730235
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Research Institution | Seijo University |
Principal Investigator |
庄司 匡宏 成城大学, 経済学部, 准教授 (20555289)
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Keywords | 自然災害 / 社会関係資本 / マイクロファイナンス / 途上国 / セーフティネット |
Research Abstract |
本研究プロジェクトの目的は、近年相次ぐマクロショックにおいても有効となる、望ましいセーフティネットの構造を追究することであった。より具体的には、大規模自然災害などのマクロショックがもたらす、マイクロファイナンスや社会関係資本といった途上国の貧困削減ツールへの影響を明らかにすることを目的とした。この研究を進めるため、期間内にバングラデシュにおいて現地調査、家計レベルデータの収集、そして経済実験の実施を計画した。 プロジェクト期間内の研究内容は、すべて当初の研究目的、研究計画に従っており、一連の研究を通じて以下の結論が得られた。保険・信用市場の未発達な途上国において、自然災害が人々の生活水準に及ぼす影響は大きい。バングラデシュで1998年に発生した洪水では、所得の減少が消費水準を有意に減少させた。さらに所得が10タカ減少するごとに、被災者が栄養失調になる確率が9%増加した。したがって、災害時における政府・NGOの支援は不可欠である。災害支援の一つとしてバングラデシュのマイクロファイナンスが行った一時的返済延期は、被災者が信用制約に直面する確率を20~27%低下させる効果があった。 一方、災害による所得の変動は、村人同士の信頼関係にも様々な影響をもたらす。災害には、人々の労働時間を増加させ、村人同士のコミュニケーションを減少させることを通じて信頼関係を悪化させる効果がある。しかし、所得変動は人々の相互扶助への依存度を高めるため、これによって信頼が高まることもある。また重要なことに、社会関係資本の低下が、被災地における治安悪化の一要因であることも実証された。 したがって、災害時にセーフティネットを実施する際には、社会関係資本への影響も十分に考慮するべきである。支援によって相互扶助が重要視されなくなれば、人々の信頼関係は悪化し、結果的に政策効果はクラウドアウトされるおそれがある。
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Current Status of Research Progress |
Reason
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Strategy for Future Research Activity |
24年度が最終年度であるため、記入しない。
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Research Products
(26 results)