2011 Fiscal Year Annual Research Report
新稲作技術の採用・伝播過程と経済インパクトに関する実証研究:インドネシアの事例
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22730245
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Research Institution | Institute of Developing Economies, Japan External Trade Organization |
Principal Investigator |
高橋 和志 独立行政法人日本貿易振興機構アジア経済研究所, 研究企画部・研究人材課付, 海外研究員 (90450551)
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Keywords | 経済発展 / 農業技術選択 / インパクト評価 |
Research Abstract |
本研究では、近年、世界各地で広まりつつあるSystem of Rice Intensification(SRI)と呼ばれる新しい稲作技術について、インドネシアを事例に、(1)その技術採用・伝播過程を、行動経済学や開発経済学の見地から実証的に分析するとともに、(2)それが採用農家に与える経済的インパクトを厳密な計量手法を用いて評価し、政策形成の指針を作成することを目指す。 今年度は、現在手持ちのデータに加え、かつてデータ収集した家計と同一農家900世帯を追跡調査し、データをパネル化した。家計調査業務は、以前の調査を共同実施したローカル・カウンターパート(現地総括者1名と調査補助員4名)に委託した。収集データは現在クリーニング中であり、このパネルデータを用いて今後、既存研究ではあまり焦点の当てられてこなかった農業技術採用行動の時間的な変化を定量的に把握していく予定である。 今年度は家計データ収集以外に、昨年度執筆した論文の改訂に時間を費やした。論文ではSRI採用の規定要因とその経済的インパクトを傾向スコアマッチングと呼ばれる手法を用いて分析している。その結果、SRI採用により、単位当たり稲作収量や稲作所得は非採用時と比べて70%以上増加するが、同時に農業労働投入量が増えるため、稲作以外の非農業労働収入を有意に減らすことが判明した。 これらをコーネル大学で開催されたワークショップやワシントンDCの開発フォーラムで発表した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
3カ年計画のうち、初年度は手持ちのデータで論文を執筆、2年目は新たなデータを収集し、そのクリーニングと簡単な分析を行い、3年目でパネルデータを用いた成果を公表していく予定であったが、この計画通り、研究は順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、昨年度集めたデータの分析に本格的に入り、論文を執筆していく。また、現在修正中の論文については、随時、学会発表を行ったり、ジャーナルに投稿し、公刊することを目指す。
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