2011 Fiscal Year Annual Research Report
東アジアにおける金融協力体制構築に向けての実証的研究
Project/Area Number |
22730259
|
Research Institution | Daito Bunka University |
Principal Investigator |
横溝 えりか 大東文化大学, 経済学部, 准教授 (20298136)
|
Keywords | 国際金融 / 金融論 / 経済政策 / 国際協力 / 対外債務 / 貿易 / 持続可能性 / ODA |
Research Abstract |
東アジア地域における金融の安定化を目指した協力体制構築に向けて、東アジア地域における域内通貨での資金調達と資金運用を支援していく具体策を提示する実証研究を行うことが、この研究の目的です。研究内容は大きく二つに分けることができます。 一つは持続可能な各国対外債務額の推計です。推計によって、各国に貸付を行ったり、各国内で起債された債券を購入する、あるいは起債にあたって保証を付ける場合に、その上限額を示すことができます。もう一つの内容は、輸出入品目別に外国為替相場のパススルー率を推計することです。推計によって、各国通貨価値が急激に下落しても、資金調達者と資金運用者が債務超過に陥る危険が少ない、つまり、バランスシート問題が発生する危険の少ない業種を特定できます。 昨年度(平成22年度)は、各国マクロ経済データと金融データを使い、持続可能な対外債務額の推計を試みました。 その際に出てきた問題は、モデルのパフォーマンスの良し悪しに、国ごとで、ばらつきがあり、なかでも、それが金融市場の部分で顕著であったことでした。 そこで本年度(平成23年度)は、この問題に、二通りの方法を並行させる形で、対応することにしました。一つの方法は、モデルの形を一般均衡モデルにすることでした。もう一つは、モデルの中の、特に金融市場の部分について、国ごとに、変数構成と構造方程式を再検討した上で、モデルを組み替えるという方法です。変数構成と構造方程式の再検討にあたっては、国際機関や、中央銀行等の各国機関の報告書等を用いて、国ごとの特徴をモデルに反映させることを試みました。同時に、ODA等の公的援助と貿易との関係も、公的援助受入国の経済規模によっては無視することができない可能性も出てきたため、公的援助と貿易との相関について分析を行い、その結果を、高瀬・横溝(2012)で公表しました。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
持続可能な対外債務額を推計するにあたって作成した、モデルのパフォーマンスが良くなかったことが理由の一つに挙げられます。
|
Strategy for Future Research Activity |
平成24年度は、前年度に引き続き、モデルのパフォーマンスを改善させることに努め、持続可能な各国対外債務額を、具体的に提示できるようにしたいと思います。 また、研究を開始した当初、東アジアで金融協力体制を築くためには、中国そして韓国と協力しつつ、日本が積極的に東アジア諸国を支援していくことが必要であると考えていました。しかし、現状では、支援を与える-受けるという形の協力では、感情的に強い抵抗もあり、協力体制の構築は難しいことがわかってきました。そこで、研究結果の解釈を、よりフラットな協力体制構築を目指したものに切り替えていきたいと考えています。
|