2010 Fiscal Year Annual Research Report
負債の公正価値測定と報告企業の信用状態の変化に関する基礎研究
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22730353
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
草野 真樹 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (50351440)
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Keywords | 会計学 / 負債 / 金融商品 / 公正価値 / 信用リスク |
Research Abstract |
本研究の目的は,負債の公正価値測定と報告企業の信用状態(信用リスク)の変化に関して,歴史的・理論的・経験的研究を行い,公正価値会計に内在する特性を明らかにすることである。平成22年度は,国際会計基準審議会(IASB)と財務会計基準審議会(FASB)が会計基準のコンバージェンスを推進する中で取り組んでいるプロジェクトの中から金融商品プロジェクトを取り上げて,金融負債の公正価値測定と報告企業の信用状態の変化に関して検討を行った。 金融負債の公正価値に対する懸念として,以前より「負債のパラドックス」が指摘されている。「負債のパラドックス」が生じるのは,報告企業の信用状態の変化が事業機会の変化に起因する場合,現行の会計システムの下では,無形財の価値の増減が財務諸表上で認識されないので,金融負債を公正価値で測定すれば,その評価損益のみが認識されるからである。そこで,「負債のパラドックス」を解決する根本的な方法として,貸借対照表の純資産簿価で株主価値を表示する理念的な公正価値会計の採用が考えられる。ところが,理念的な公正価値会計は財務報告の目的に抵触するため,当該方法を採用することは困難である。 そこで,今年度は,「負債のパラドックス」を解決する幾つかの代替案について整理・分析を行い,研究成果として2本の論文を公表した。「金融負債の公正価値測定と報告企業の信用状態の変化」(『日本簿記学会年報』第25号)では,海外の先行研究で提案された方法について検討を行った。そして,「金融負債の公正価値測定の動向と報告企業の信用状態の変化」(『會計』第178巻第4号)では,FASBが2010年5月に公表した公開草案の中で提案した方法を検討し,その特徴を明らかにした。
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Research Products
(2 results)