2011 Fiscal Year Annual Research Report
負債の公正価値測定と報告企業の信用状態の変化に関する基礎研究
Project/Area Number |
22730353
|
Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
草野 真樹 京都大学, 経済学研究科, 准教授 (50351440)
|
Keywords | 会計学 / 負債 / 金融商品 / 公正価値 / 信用リスク / ストック重視の会計 |
Research Abstract |
本研究の目的は,負債の公正価値測定と報告企業の信用状態(信用リスク)の変化に関して,歴史的・理論的・経験的研究を行い,公正価値会計に内在する特性を明らかにすることである。平成23年度は,国際会計基準審議会(IASB)と財務会計基準審議会(FASB)が会計基準のコンバージェンスを推進する中で概念フレームワークの統合プロジェクトに取り組んでいるが,その中で本研究課題と密接に関連するフェーズC「測定」を取り上げて,その動向とその方向性について検討した。IASBとFASBは,当初,単一の測定基準として公正価値を指向していたが,2008年頃から混合測定アプローチに基づいて測定フェーズの検討を進めている。そして,このような単一の測定基準(公正価値)から混合測定アプローチという方向性を,金融商品と収益認識のプロジェクトを用いて検証し,概念フレームワークプロジェクトの方向性と個別の会計基準の方向性が軌を一にしていることを確認した。ただし,現在,混合測定アプローチに基づいて審議が進められているとはいえ,依然として公正価値が重視されていることに変わりはない。当該研究成果は,論文として日本会計研究学会特別委員会の報告書で発表している。 次に,IASBとFASBは,会計基準のコンバージェンスを推進する中で,公正価値測定の導入とオンバランス項目の拡大を通じて,貸借対照表重視の会計モデルを採用すると指摘される。そこで,企業価値評価モデル(残余利益モデル)に基づいてフローとストックの観点から2つの会計モデルを提示・整理し,貸借対照表重視の会計モデル(ストック重視の会計モデル)か抱える問題点を検討した。当該研究成果について,日本会計研究学会第61回関西部会の統一論題で研究報告を行った。さらに,公正価値測定重視の会計処理は証券化取引の会計処理にも表れており,証券化会計の観点から,公正価値会計の特性について分析した。当該研究成果は,カナダ会計学会とアメリカ会計学会で研究報告を行った。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ,IASBとFASBが推進している会計基準のコンバージェンスのプロジェクトの中から,本研究を遂行するに当たり必要なプロジェクトを取り上げ,当該プロジェクトの動向とその特徴について検討を行って,着実に研究成果を公表していることから,「おおむね順調に進展している」と評価できる。
|
Strategy for Future Research Activity |
今後も,当初の研究計画に従って,負債の公正価値測定と報告企業の信用状態(信用リスク)の変化に関して,歴史的・理論的・経験的研究を行い,公正価値会計に内在する特性を明らかにする。
|
Research Products
(5 results)