2012 Fiscal Year Annual Research Report
負債の公正価値測定と報告企業の信用状態の変化に関する基礎研究
Project/Area Number |
22730353
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
草野 真樹 京都大学, 経済学研究科(研究院), 准教授 (50351440)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 会計学 / 負債 / 金融商品 / 公正価値 / 信用リスク / ストック重視の会計 |
Research Abstract |
本研究の目的は,負債の公正価値測定と報告企業の信用状態(信用リスク)の変化に関して,歴史的・理論的・経験的研究を行い,公正価値会計に内在する特性を明らかにすることである。平成24年度は,国際会計基準審議会(IASB)と財務会計基準審議会(FASB)が会計基準のコンバージェンスを推進する中で貸借対照表重視の会計モデルを採用されると指摘される。そこで,企業価値評価モデル(残余利益モデル)に基づいて,フローとストックの観点から2つの会計モデルを提示し,ストック重視(貸借対照表重視)の会計モデルが抱える問題点を示した。具体的には,フロー重視の会計からストック重視の会計へと会計モデルが変容する場合,公正価値(出口価格)に基づくストック重視の会計は,ストック情報の意思決定有用性が改善されるとは限らず,利益情報の有用性が低下するために,全体として,意思決定支援機能が損なわれる可能性があることを明らかにした。当該研究成果は,論文として『會計』とThe Japanese Accounting Reviewで発表している。 また,上記の研究と関連して,ストック重視の会計によって,財務会計の意思決定支援機能が改善されるのか否かを,認識対開示の実証研究のサーベイを通じて調査した。その結果,現時点では,意思決定有用性の観点から,認識と開示の間に差異があるとは必ずしも明確に言うことはできないことが分かった。当該研究成果は,論文として日本会計研究学会特別委員会の報告書で発表している。さらに,ストック重視の会計処理は証券化取引やリース取引の会計処理にも表れており,これら取引の観点から,公正価値測定の特性やストック重視の会計の経済的帰結について分析した。当該研究成果は,海外の国際学会で研究報告を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
現在のところ,IASBとFASBが推進している会計基準のコンバージェンスのプロジェクトの中から,本研究を遂行するに当たり必要なプロジェクトを取り上げ,当該プロジェクトの動向とその特徴について検討を行って,着実に研究成果を公表していることから,「おおむね順調に進展している」と評価できる。
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Strategy for Future Research Activity |
今後も,当初の研究計画に従って,負債の公正価値測定と報告企業の信用状態(信用リスク)の変化に関して,歴史的・理論的・経験的研究を行い,公正価値会計に内在する特性を明らかにする。
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Research Products
(7 results)