2010 Fiscal Year Annual Research Report
先住民族テレビの成立・存続要件と国家の制度的支援のあり方に関する研究
Project/Area Number |
22730391
|
Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
八幡 耕一 名古屋大学, 国際言語文化研究科, 准教授 (10452210)
|
Keywords | 先住民族 / メディア / 政策 |
Research Abstract |
研究初年度にあたる本年度は、インターネットやデータベースを駆使し、(1)「先住民族の権利に関する国連宣言」第16条起草の背景、(2)ニュージーランドおよびカナダの先住民族テレビ関連政策の2点につき、網羅的な資料・文献の収集および分析を目的とした。日本国内で行うこれら作業は、研究焦点や手法の精緻化に不可欠であると同時に、現地調査でなければ得難い資料の特定、現地調査で検証すべき点の仮説化につながるものである。 権利宣言は起草から採択まで22年という長い歳月を要しているが、この過程で先住民族メディアに関する第16条の規定がどの程度重視され、どのような議論が展開されたかは不明であり、当事者間の交渉経過を、議事録や関係者の回顧録等から明らかにする必要がある。同様に、先住民族メディアの進展(許容)度に関して世界でも主導的地位にあるニュージーランドとカナダの諸政策(放送政策、多文化政策など)につき、その形成過程における先住民族テレビをめぐる議論や争点を子細に調査分析することは、本研究への示唆を得るうえで有用と考えられる。 結果的に本年度の研究成果は、(1)(2)双方について相当量の資料を入手することができた。一方で、存在は明示的・暗黙的に認められるものの、データベース化されていない(ゆえに日本国内からのアクセスが困難な)資料も少なくないことが判明した。その背景には、権利宣言も個別国家の関連政策についても、政策形成のためになされた議論の多くが1980年代になされており、当時の資料が必ずしも電子化して保存されていないことが背景にあると思われる。 欠損資料の存在を考慮すれば、収集済資料の分析から結論を導くのは時期尚早であるが、「現地調査でなければ得難い資料の特定」という意味では本年度の研究は十分有意義であった。また、研究の焦点や方法も、計画段階の構想で十分に実現可能であることも確認された。
|