2011 Fiscal Year Annual Research Report
先住民族テレビの成立・存続要件と国家の制度的支援のあり方に関する研究
Project/Area Number |
22730391
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Research Institution | Ryukoku University |
Principal Investigator |
八幡 耕一 龍谷大学, 国際文化学部, 准教授 (10452210)
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Keywords | 社会学 / 政策科学 / メディア |
Research Abstract |
前年度に引き続き、先住民族メディアと権利宣言第16条の起草背景に関する資料収集と文献調査を継続した。権利宣言が起草から採択まで長い歳月を要した背景(政治的な駆け引き等)は概ね明らかになっている。その背景には価値観の多様化(例えば環境問題に対する先住民族の伝統的知識の有用性が評価される等)などがあると推察されるが、より注目すべきは国連等の作業部会での政府間、あるいは政府と非政府組織(ここには先住民族団体も含まれる)間の対面交渉の背景にある、いわゆる情報通信技術の目覚ましい発展である。先住民族の権利宣言採択までの約20年間は、インターネットが社会的に広く普及した時期と重なり、これによる公論あるいは公共圏の形成とその影響を見過ごすべきではない。 一方、先住民族メディアに関する第16条の規定がどの程度重視され、どのような議論が展開されたかについては、非公式の記録が残存しているとは限らず、また権利宣言の起草段階が長期に渡るため、利害関係者の入れ替わりや見解等の変遷もあり、引き続き資料収集と文献調査を進める必要性がある。なお、この点についても、インターネットの普及前と普及後では関連資料の蓄積に大きな差異があるように思われるため、本研究では二重の意味でITの影響を強く意識している。 先住民族メディアに対する諸外国の制度的支援については、当該国の研究者を中心にエスノグラフィックな文献が少なからずあることから、それらの再検討を通じて知見や教訓等の国家・時期横断的な整理を進めている。当初予定していた国外での現地調査については、上述のように資料収集と文献調査をさらに進める必要があること、インターネットを利用した音声通話やメール等での聞き取りでもある程度対応可能であること(在外の研究者や関係者とは適宜連絡や意見交換を行った)から次年度に実施する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画はほぼ当初企図していたとおりに進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
当初考慮していなかった情報通信技術(IT)の影響が明らかになりつつあることから、今後の研究は先住民族の権利宣言の起草過程や、諸外国の先住民族メディアに対する制度的支援(政策措置化の過程)におけるインターネットの影響、具体的にはその公論形成あるいは公共圏的機能の検証にも注目していきたい。
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