2011 Fiscal Year Annual Research Report
先住民族の視点から見たオーストラリア多文化主義:社会学的実証研究と理論的再検討
Project/Area Number |
22730403
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Research Institution | Keio University |
Principal Investigator |
塩原 良和 慶應義塾大学, 法学部, 准教授 (80411693)
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Keywords | 多文化主義 / 先住民族 / オーストラリア / 社会学 / 共生 |
Research Abstract |
本研究では、これまで主に「移民」に焦点を当てて研究されてきたオーストラリア多文化主義を「先住民族」という観点から再考する。具体的には、先住民族の存在や主張をオーストラリア多文化主義の理論・実践のなかでどのように位置づけることができるのかを社会学的実証調査および他国の事例との比較分析によって明らかにし、先住民族の存在や主張にじゅうぶんに配慮した多文化主義のあり方を理論的に検討していく。それによりオーストラリア多文化主義研究の理論的・実証的水準を向上させるとともに、日本における「多文化共生」のあり方を考察する際の示唆を得ることもめざす。 平成23年度においては、前年度に収集したデータの整理・分析を進めて研究の理論枠組みの構築を目指すとともに、それをより確固たるものにするべく2回の現地調査を実施した。11年8月の調査では、先住民族のルーツをもつ法律学者であるラリッサ・ベーレント博士、先住民族政策の第一人者であるジョン・アルトマン博士、北部準州で先住民族に対するソーシャルワークに従事する林靖典氏とエマ・マーフィー氏などに聞き取りを行い、貴重な知見を得ることができた。また12年3月の調査では林氏にフォローアップの聞き取りを行ったほか、環境問題の観点から先住民族への支援を行っているジャスティン・タフィー氏への聞き取りを行った。また両方の調査を通じて、オーストラリア国立図書館や北部準州立図書館などで資料収集を行い、成果を得た。また日本の先住民族運動に関する調査も行い、アイヌ民族と沖縄の2名の活動家に聞き取りを行ったほか、先住民族支援国連NGO「市民外交センター」のメンバーとの意見交換を行った。こうした研究の成果を学術論文や著書のかたちでまとめることもできた。こうした業績は平成24年度には公刊予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初予定していた遠隔地の先住民族コミュニティでの聞き取り調査は、現地コミュニティに入ることの手続き的困難さから実現できなかった。しかし先住民族知識人・支援団体への闘き取りは順調に進み、また先住民族政策に関する文献資料は予定よりも大量に集めることができた。研究成果の公表についても、来年度における研究論文や編著書、単著書の公刊の目途をつけることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
上述のとおり、遠隔地の先住民族コミュニティでのフィールドワークは技術的・手続き的に困難であることが判明したため、政策分析におよび理論化に研究の比重を移すことを計画している。平成24年度中に研究成果として編著書および単著を刊行することを目標としたい。
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Research Products
(6 results)