2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22730576
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浅野 倫子 東京大学, 大学院・人文社会系研究科, 特任研究員 (40553607)
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Keywords | 読み / 文処理 / 非言語的視覚処理 / 意味処理 / 情景の概略情報(ジスト) / 実験心理学 / 認知心理学 |
Research Abstract |
本研究課題の目的は、文の読みという言語処理において非言語的、視覚的概念情報が即時に活性化され、またそれが文の読み処理の迅速化に寄与している可能性を検討することである。平成22年度の研究成果は以下の2点にまとめられる。 (1)本研究のベースとなる文処理理論の精緻化と学術誌での発表:研究代表者はこれまでの研究で、文中の複数の単語の意味情報が並列処理され、それにより原型的な文脈表象(プロト文脈と名付ける)が即時生起し、同時に単語認知に影響する可能性を示した。このプロト文脈は情景知覚における情景のジスト(概略情報)とよく似た性質を持つことから、本研究では具体的には、両者が共通のものである可能性を検討することを目的としている。当該年度は新規性の高い文処理理論であり、また本研究のベースであるプロト文脈理論を精緻化し、国際的な学術論文誌で発表した(Asano & Yokosawa,2011)。 (2)基礎的現象の検討:プロト文脈理論では、文を構成する単語の意味情報の並列処理によって、原型的な文脈表象が即時活性化されることが示されている。そのため、本研究は文処理の性質を明らかにしようとするものであるが、まずは単語単体の意味処理と視覚的表象の活性化の関係について知る必要がある。そこで当該年度は、単語単体を視覚提示した際に、その単語の意味に付随する視覚的表象までもが自動的に活性化されるかどうかを実験的に検討した。たとえば提示された色が何色かを判断する課題において、色の提示直前にその色を属性として持つ単語(例:「トマト」、赤)を提示すると、単語は課題の遂行に無関係な情報であるにも関わらず、色の判断が促進されるという結果が得られ、1単語の処理でも視覚的表象が自動的に活性化されることが示された。今後はこの基礎データをふまえ、単語が複数存在し1つの文脈を成している状況、すなわち文の処理における視覚的表象の活性化について検討していく。
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Research Products
(6 results)