2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22730590
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Research Institution | Kyoto Koka Women's University |
Principal Investigator |
伊藤 美加 京都光華女子大学, 公私立大学の部局等, 准教授 (90367954)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 指示忘却 / リスト法 / アイテム法 / 記憶抑制 / 感情価 / 情動刺激 |
Research Abstract |
平成22年度における本研究において,感情語や特性語といった刺激材料では,刺激リストの感情価によって指示忘却効果の生起が異なる結果と異ならない結果との両方が得られた。また平成23年度における本研究において,顔写真といった刺激材料では,顔刺激の感情価によって指示忘却効果の生起が異なるとの結果が得られた。平成24年度では,これらの成果を次の二つの観点から引き続き検討を行った。 (a)刺激リストの感情価の組み合わせに関する検討:リスト法による指示忘却パラダイムを用いて,忘れるべきリストと次に憶えるべきリストとの感情価の組み合わせについて検討した。 その結果,ネガティブ語が忘却されにくいわけではなく,ネガティブ語を忘却するには,ネガティブ語を新たに憶える必要があること,ポジティブ語やニュートラル語のように,異なる感情価の単語では記憶を更新できない可能性があることが示唆された。 (b)顔刺激の感情価による検討:顔刺激が意図的に忘却されるか,ポジティブな刺激(喜び顔)とネガティブな刺激(怒り顔)とで違いはあるのかを,ニュートラルな刺激(真顔)と比較することにより,アイテム法による指示忘却パラダイムを用いて検討した。その結果,忘却手がかりが提示された刺激は記銘手がかりが提示された刺激よりも記憶成績が悪いという指示忘却効果が,ポジティブ刺激においてのみ認められた。従って,顔刺激の感情価によって指示忘却効果の生起は異なることが示された。 (c)非言語の刺激材料を用いた検討:言語的な符号化により選択的精緻化を行うことが難しいような物体写真を用い,非言語刺激が意図的に忘却されるかを,アイテム法による指示忘却パラダイムにより検討した。その結果,指示忘却効果が認められ,忘却すべき刺激材料を検索抑制する傾向が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
交付申請書に記載した「研究の目的」に沿って研究を進めることができたため。具体的には,第一の研究目的「特定の情動を喚起する写真画像の記憶は抑制されうるのか」を,ポジティブな情動を喚起する写真画像と,ネガティブな情動を喚起する写真画像とを区別して,検討できた。また,第二の研究目的「情動刺激の記憶抑制を生み出す要因は何か」を,リスト法とアイテム法とによる指示忘却パラダイムを比較しながら検討できた。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度における本研究に引き続き,(a)情動刺激の検討として,情動の強度が強い写真画像や日常経験する出来事に関わる写真画像を用いて,刺激材料の情動性により記憶抑制において異なる要因が作用しているのかを再度検討を行う。また(b)忘却方略の検討として,有効な忘却方略があるのか,それはどのような方略かを検討する。さらに(c)検索プロセスの検討として,指示忘却パラダイム以外の記憶の抑制過程を調べる課題を用いたり,記憶テスト時に検索時の想起意識について尋ねたりすることを検討する。 最終的に以上の研究で得られた知見・成果の総括を行い,情動が記憶抑制に及ぼす影響に関するモデルを提案し,国内外で発表する。更に,「情動的な記憶の促進や抑制を生み出す要因は何か」,「情動的な記憶はどのように促進されたり抑制されたりするのか」といった,情動的な記憶の形成プロセスに関する研究や,「情動的な記憶を促進あるいは抑制しやすい人はどのような特徴があるのか」といった,情動的な記憶における個人差を調べた先行研究をまとめて,感情と記憶に関する統合的な理論を提案することを目指す。
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