2010 Fiscal Year Annual Research Report
現代米国の教員養成制度改革における諸伝統-「社会改革主義的伝統」を中心に-
Project/Area Number |
22730623
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
小野瀬 善行 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (50457735)
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Keywords | 米国 / 教員養成制度改革 / alternative route to teacher certification |
Research Abstract |
本研究の目的は、現代米国の教員養成制度改革における諸伝統について、とりわけ「社会改革主義的伝統(the social-reconstructionist tradition)」の特質を明らかにすることである。この研究を通じ、「専門職化」と「多様化」を特徴とする1980年代以降の米国における教員養成に関する政策・実践・運動を分析する基礎視角の構築を進めることとする。 初年度(平成22年度)では、米国の研究動向を踏まえながら「社会改革主義的伝統」について理解を深めることとした。その成果の一部を雑誌論文としてまとめた(11.研究成果覧参照)。今日、米国では「新しい教員養成」と呼ばれる、教員養成を公共政策(public policy)の課題の一つに位置づけ、研究や客観的指標(evidence)に依拠し成果主義を取り入れることを特徴とする動向が顕著であることを指摘した。政策問題として教員養成をとらえることは、政策立案者、学校関係者、そして一般市民に対して、広く教員養成に関する問題を共有し得る契機となる可能性を秘めている。他方で、教員の役割や専門性、質を単純化し、ひいては教育を経済発展の論理に従属させる危険性も同時に含むものである。後者の危険性に十分に配慮しながら、児童・生徒の学力、教員の役割や専門性について多様な可能性があり得ることを、研究を通じて提示していくことが重要であることを指摘した。このような中で、教員養成制度改革における諸伝統をどのように位置づけられることができるのかについて、次年度以降、研究に進めていきたい。 また、本科研の成果の一部を、アメリカ教育学会編『現代アメリカ教育ハンドブック』(東信堂2010年)の項目執筆(「オルタナティブ教員資格認定制度」等)及び日本教育制度学会大18回大会(於:山梨県立大学2010年11月14日)での課題別セッションにおいて活用した。
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