2011 Fiscal Year Annual Research Report
現代米国の教員養成制度改革における諸伝統-「社会改革主義的伝統」を中心に-
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22730623
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Research Institution | Kushiro Public University of Economics |
Principal Investigator |
小野瀬 善行 釧路公立大学, 経済学部, 准教授 (50457735)
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Keywords | 教員養成制度 / アメリカ合衆国 / alternative route to teacher certification |
Research Abstract |
まず、教員養成制度における「多様化」の重要さを唱え、テキサス州において教員養成におけるオルタナティブプログラムの導入に関与した、Vicky Dill博士を訪問した(2011年9月12日)。聞き取り調査においては、博士らが導入したプログラムは、教員不足を解消するために教員養成において大学以外の地方学校区等の主体を関与させ、さらに大学との連携を可能にした等一定の成果があったものの、2000年代以降の「規制緩和」を推進する政策の現状と課題を鑑み、新たな修正が必要であることを聞き取ることができた。博士の証言は1980年段以降の教員養成制度の特質と課題を多面的に理解する上で貴重な証言であると思われる。 次に、1980年代の教員養成制度改革に関する政策・実践・運動を分析を行うことに関連して、the National council for Accreditation of Teacher Education (NCATE)により委任された、学識者会議がまとめた"Transforming Teacher Education through Clinical Practice"を手がかりとして、教員制度に関する連邦および各州の政策、専門職団体の報告書等において「臨床経験が豊かな(clinically-rich)」等の言葉がキーワードとなり、研修医(residency)モデルを参考にした教員養成改革が模索されている動向を指摘した。この背景には、大学における教員養成が、教育現場におけるニーズに質及び量の両面で答えられる教員養成をすることができていないという課題が政策的に設定されている事情があることを明らかにした。さらに教員養成において学校現場を重視するということが生徒の学力達成度という側面に矮小化され、教員及び教員養成プログラムの評価・認証に生徒の学力達成度を関連づける法制度の最新動向を、テキサス州を事例としてまとめた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
連邦レベルにおける初等中等教育法改正法(No Child Left Behind Actof 2001)の改正、各州における新たな教員養成制度改革関連法案の成立に関する情報を収集し、整理することは順調に進めることができている。しかしながら、それらの作業に予想以上に時間がかかっているため、アメリカ合衆国における教員養成制度改革の諸伝統に関する理論構築作業を進めることができていない。
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Strategy for Future Research Activity |
アメリカ合衆国における教員養成制度改革の諸伝統に関する理論構築作業を進めるために、米国における教育制度史、教員養成理論を含め、広く先行研究を渉猟するため、関連ある出版物を入手することに加え、他図書館所蔵の相互貸借・複写依頼、データベースを積極的に活用する。
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