Research Abstract |
【目的】本年度の研究の目的は,視覚性持続処理課題を用いた注意機能を評価するシステム構成を検証するために,まず健常若年成人を対象に,注意機能,運動機能,身体運動反応速度(視覚的注意を含む運動機能)の3課題を測定し,運動経験の有無によって視覚的注意機能の反応速度と身体運動反応速度の関係について検証した。 【対象・方法】対象は20歳代の運動経験者(10名)と運動未経験者(11名)の21名とし,本研究の趣旨を十分に説明し,同意を得たうえで実験を行った。実験方法は,視覚的注意課題,身体運動反応速度の測定には,「もぐらーず」を使用した。視覚的注意課題の計測は端座位にて行い,身体運動反応速度は立位にて行った。また,アイマークレコーダー(nac Image Technology社製)を用いて.被験者が画面の中心を注視していることや,もぐらへ視線が動き,視覚的注意が向いていることを確認した。運動課題の測定には文部科学省,体力・運動能力調査に基づいて「反復横とび」を行った。また,実験終了後に視覚的注意課題,身体運動反応速度の疲労感について,Visual Analogue Scale(以下VAS)を用いて調査を行った。 【結果・考察】視覚的注意機能,身体運動反応速度について,経験群は未経験群と比較して有意に低値を示した。また,運動機能について,経験群は未経験群と比較して有意に高値を示した。これらのことより,運動経験群において視覚的注意を含む身体運動反応速度が速いのは,視覚的注意機能と運動機能の双方の機能が優れているためであることが示唆された。さらに,経験群では視覚的注意機能と身体運動反応速度に正の相関関係が認められ,視覚的注意機能の反応速度が速いほど身体運動反応速度も速いことがわかった。さらに,実験終了後の疲労感の調査の結果,視覚的注意課題では有意差は見られなかったが,身体運動反応速度では未経験群は経験群と比較して有意に疲労感が強いことがわかった。このことから,未経験群は視覚的注意を向けることに対して疲労感を感じないが,身体運動反応速度では疲労感を感じていることが明らかとなった。次年度は,本年度の結果を参考に視覚的注意課題プログラム(プロトタイプ)を作成し.健常幼児を対象に注意機能を測定し,プログラム作成を行っていく予定としている。
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