2010 Fiscal Year Annual Research Report
ケーラーアインシュタイン計量の存在問題と安定性に関する研究
Project/Area Number |
22740041
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
佐野 友二 九州大学, 大学院・数理学研究院, 助教 (00399792)
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Keywords | ケーラーアインシュタイン計量 / トーリックファノ多様体 / 乗数イデアル層 / リッチソリトン / K安定性 / 対数的標準閾値 |
Research Abstract |
本年度は,以下の3つの研究を行なった.1.東京工業大学の二木昭人氏との共同研究を通じて,リッチフローの自己相似解のひとつであるコンパクト勾配縮小リッチソリトンをもつリーマン多様体の直径を下から普遍的な定数で評価した.多様体がケーラー多様体の場合,このリッチソリトンはケーラーリッチソリトンに等しい.今回の結果もケーラー幾何の手法とBakry-Emery幾何の手法を組み合わせることで示された.この結果はコンパクト勾配縮小リッチソリトンに対するギャップ定理として理解できる.今回の結果の評価を満たす具体例を構成することが今後の課題である.2.Kollarは川又対数的端末的特異点をもつ因子を用いてケーラーアインシュタイン計量の存在への十分条件を与えた.この結果を動機として,トーリックファノ多様体上の乗数イデアル層の性質について調べた.特にケーラーリッチフローから得られる乗数イデアル層のサポートが余次元1であることを確かめた.この結果を元にケーラーアインシュタイン計量の存在性への障害となる因子を定義した.さらにKollarの因子と今回の結果から得られる因子を比較し,どちらがよりK安定性への障害になり得るか,について考察した.3.京都大学の尾高悠志氏との共同研究を通じて,ファノ多様体のアルファ不変量の下からの評価が多様体のK安定性を導くことを示した.これらの関係はケーラーアインシュタイン計量の存在性を経由することで既に知られていた.本研究ではアルファ不変量を対数的標準閾値に置き換えることで計量を用いない代数幾何的な証明を与えた.これによりK安定性と多様体(または対数的対)の特異点の関係が明らかになり,K安定性への代数幾何的理解が進んだ.
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