2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740090
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
前川 泰則 神戸大学, 理学研究科, 准教授 (70507954)
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Keywords | 非圧縮性粘性流体 / Navier-Stokes方程式 / 渦度方程式 / 非線形偏微分方程式 / 高レイノルズ数 / 境界層 / 粘性零極限 / 解の漸近挙動 |
Research Abstract |
研究計画に基づき、非圧縮性粘性流体の局所構造を念頭においた下記の研究を行った。 1.輸送項のついた分数階熱方程式の基本解の研究 消散型準地衡流方程式のように、非圧縮性粘性流体に関連した方程式には分数冪の拡散効果と速度場による輸送効果が取り入れられた方程式がある。このような方程式の解の局所的な性質を調べるため、大阪大学の三浦英之氏との共同研究を行なった。本研究の成果は2本の論文にまとめられ、現在投稿中である。 2.二次元外部領域におけるNavier-Stokes方程式の解の時間大域的挙動の研究 二次元外部領域におけるNavier-Stokes方程式は,期待される解の時間減衰が高次元の場合よりも遅く,時間大域的な解の振る舞いを調べる上で特有の難しさがあることが知られている.本研究では,Fourier Institute(Grenoble)のTh.Gallay氏と共同研究を行い,初期渦度場が十分早く空間遠方で減衰し,かつ総渦量が小さいときには,解が時間無限大でOseen渦に漸近することを証明した.これは全平面における既存の結果の自然な拡張となっているが,証明自体は新しいアイデアに基づいており,今後さらなる発展が期待される。研究成果は現在論文としてまとめられ,現在投稿中である. 3.二次元半空間における渦度方程式の数学解析 非自明な境界がある場合,非圧縮性粘性流体の渦度場は,その複雑な境界条件から二次元であっても数学的にはこれまでほとんど研究されてこなかった.本研究では,二次元半空間の場合の渦度場の数学解析を行った.特に,高レイノルズ数の極限での渦度場の振る舞いを調べ,初期時刻において渦度場が境界から離れた場所にある場合は,領域内部ではEuler流の渦度場に収束し,境界付近ではPrandt1流で記述される渦線を形成することを厳密に証明することに成功した.これは高レイノルズ数における流体の数学解析として非常に大きな成果であり,近く論文として公表する予定である.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
非自明な境界がある場合における非圧縮性粘性流体の渦度場の数学解析において大きな進展があった.特に,粘性零極限における渦度場の挙動を調べることは数学的にも工学的にも重要であり,この問題において成果が出たことは当初の予想をはるかに上回るものである.
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Strategy for Future Research Activity |
非自明な境界がある場合における非圧縮性粘性流体の渦度場の数学解析をさらに進め,渦度場の記述する流体の局所構造の解明を目指す.特に外部領域などより物理的に重要な場合や,境界層が剥離しうる場合の数学解析は極めて重要であり,国内外の研究者とも連携しながら研究を進めていく必要がある.そのため,今年度は海外等出張を多く予定している.
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