2011 Fiscal Year Annual Research Report
複数の界面ダイナミクスとその組み合わせによる界面の特異的挙動の解析
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22740109
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
大塚 岳 群馬大学, 大学院・工学研究科, 講師 (00396847)
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Keywords | 界面の発展方程式 / 拡散方程式 / 機械学習理論 / 画像処理問題 |
Research Abstract |
多重井戸型ポテンシャルによるAllen-Cahn型方程式によるバンチング現象について研究を行った。本研究で考察した方程式は年輪状に並ぶ3つの安定相と、その相間に現れる内部遷移層の運動を記述したものである。本研究では安定相のポテンシャルの差によって遷移層に駆動力が与えられ中間の相が縮小し二つの遷移層が衝突する現象を、相分離現象の観点から研究を行った。その過程で相分離現象が機械学習理論における線形分離不可能な2クラスデータの分類器の構成に応用でき、さらにそれは熱方程式の解の挙動を利用することでより単純化できることが分かった。 すなわち、空間上の点は二つのクラスに分類できるが、既知として持つ情報は不足があり空間すべての点を分類していないとする。そのとき空間に二つのクラスを分ける境界線を求める問題を考える。これを解決する方法として、一方の集合上で+1、他方に-1を与え、未知の領域は0とした関数を熱方程式の初期値として微小時間の範囲で解く。このとき得られた解の符号が未知データの分類となり、ゼロ等高線がその2クラスの境界線であると考えられる。 この構成法の完成には熱方程式の解の符号の時間を0に近づけたときの極限が存在する必要がある。本研究ではある球の半径に対し初期値の球面平均が対応する関数を導入し、これの符号変化回数が有限であるときにその球の中心において求める極限が存在することを証明した。 本研究成果は本来の研究であるバンチング現象の視点から見ると、二つの遷移層が空間のどこで衝突し押し合いを始めるかを明らかにする結果と考えられる。押し合いを始める位置が分かれば、その情報をもとに新たな評価を行うことで押し合いから得られる遷移層のダイナミクスが分かるので、バンチングの研究を進展させる結果と考える。また、本研究結果は画像処理問題の画像分割問題への応用も期待できる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
綾織り模様の現れる、ステップ毎に異なる異方性を持つ運動方程式は一つ提案出来た。その後の討論により本研究で提案した数理モデルの改良の方針が見えている。 ステップが束をなして運動するバンチング現象では、全てが同じ運動方程式に従う揚合でも束が安定であることを確認出来た。駆動力の差によって離れていたステップが束になる現象については、束となりまとまった後の運動を捉える研究について関連する研究者との討論から解決方法が得られたと考える。 中空孔の数理モデルの研究についてはトイモデルによる中空孔の発生の数値計算実験を行い、その結果をもとに結晶成長を理論と実験から研究する研究者との討論を進めている。本研究はらせん転位の中心部におけるステップの挙動の数理モデル化も重要であり、こちらは渦巻曲線の運動における中心の挙動についての従来の研究結果の精査とともに、単純な曲線の運動方程式から中心部の挙動を解析する研究者との討論を行い、資料収集と結果の精査を進めている。 本研究の応用については今後の研究課題であるが、当初は予想し得なかった分野での成果が得られている。 以上の理由により、いくつかの問題は残るもののおおむね順調に進んでいると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
ステップのバンチング現象に関する研究については、ステップが束になった後の束全体のダイナミクスについて研究を進め、これを解明する。これまで収集した資料について精査を進め、その資料を発表した研究者との討論も交えて研究を遂行する。 綾織り模様の数理モデルはステップの曲線ではなくステップが形成する表面全体を表す等高面法による定式化から数理モデルへと改良すべきであると考えている。これについては等高面法の研究者との討論とともに、等高面法で数値計算実験を行っている研究者との討論で研究を進めていく。これについては国内の研究者の他、米国に画像処理問題等を通して等高面法の研究を行う研究者が数多くいるので、彼らとの意見交換をしたいと考えている。 上記研究は微分方程式の解が不連続性を引き起こす問題に対する適正粘性解の研究とも深く関連している。粘性解の研究者は国内および米、伊、仏国に多いので、彼らとの討論とこれまでの研究成果の精査を行う。中空孔の発生問題では解が不連続になることが予想されるので、まずは数値計算実験で得たトイモデルに対し適正粘性解が適用出来るか検討を行い、適切な概念の提案と発展を進める。
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Research Products
(10 results)