2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740124
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
太田 直美 奈良女子大学, 理学部, 助教 (40391891)
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Keywords | 宇宙物理 / X線天文学 / 銀河団 / 高温プラズマ / X線分光 / スニヤエフ-ゼルドヴィッチ効果 / 衝突合体現象 / 宇宙構造形成 |
Research Abstract |
本研究は、宇宙最大の天体である銀河団に注目し、X線とスニヤエフ-ゼルドヴィッチ効果の観測から銀河団のダイナミックな進化を解明することを目的としている。本年度は、主に「すざく」衛星で取得した高温銀河団のデータ解析から、銀河団同士の激しい衝突に伴って生成されると予想される超高温成分の探査を行った。まず、アーベルカタログの銀河団のうち最もガス温度が高いA2163銀河団について「すざく」の広帯域X線スペクトルを解析した。それにより、高い有意性で硬X線放射を検出することに初めて成功した。この放射の起源を調べるため、ニュートン衛星のX線データとの比較も行ったところ、温度が約14keVの熱的モデルにより観測された広帯域X線スペクトルをよく再現できることがわかった。一方、過去にRXJ1347銀河団において確認したような超高温成分は特にみられなかった。また過去にはRXTE衛星からA2163の非熱的硬X線放射の報告がなされたが、不定性が大きいという問題があった。今回、より感度の高い「すざく」衛星を用いて、非熱的放射は有意ではないことを確認した。その非熱的硬X線フラックスの上限値を電波強度と比べることでこの銀河団の平均磁場にも制限をつけた。以上のようにA2163において超高温ガスや非熱的放射が顕著でないことは、銀河団の衝突合体とガス加熱のプロセスを理解するうえで新しい手がかりを与える。この成果について、天文学会で口頭発表を行った。次に、衝突によるショック構造が顕著な1E0657銀河団について、「すざく」およびチャンドラ衛星のX線データ解析から超高温ガスの兆候を見いだした。そこで高温領域を特定し、放射の性質を明らかにするため、より詳細な解析を進めている。以上に加え、将来のASTRO-Hミッションに向けた硬X線撮像や詳細分光の観測シミュレーションを行った。これを通じて、銀河団における超高温成分まで含めた温度マッピングや衝突合体に伴うガス運動の観測可能性について検討を進めた。
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Research Products
(5 results)