2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22740124
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Research Institution | Nara Women's University |
Principal Investigator |
太田 直美 奈良女子大学, 理学部, 助教 (40391891)
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Keywords | 宇宙物理 / X線天文学 / 銀河団 / 高温プラズマ / X線分光 / スニヤエフ-ゼルドヴィッチ効果 / 衝突合体現象 / 宇宙構造形成 |
Research Abstract |
本研究は、宇宙最大の天体である銀河団に注目し、X線とスニヤエフーゼルドヴィッチ効果の観測から銀河団のダイナミックな進化を解明することを目的としている。本年度は主に、「すざく」衛星で取得した銀河団1EO657のデータ解析から、銀河団同士の激しい衝突に伴って生成されると予想される超高温成分の探査を行った。まず、「すざく」の広帯域X線スペクトルを解析から、硬X線放射を検出することに成功した。この放射の起源を調べるため、複数のモデルを仮定してフィッティングを行ったところ、約13keVの一温度モデル、あるいは約7keVと約17keVの放射を足し合わせた二温度モデルで広帯域X線スペクトルをよく再現できることを示した。この結果はチャンドラ衛星の高空間分解能データから構築した二次元温度分布とも矛盾しない。従って、1EO657銀河団には、衝突現象によって生成したと考えられる超高温成分が存在することが「すざく」のスペクトルデータから確認できた。一方、Swift衛星からこの天体が非熱的硬X線放射をもつことが報告されたが、不定性が大きいという問題があった。今回、より感度の高い「すざく」衛星を用いて、非熱的放射は有意ではないことがわかった。その非熱的硬X線フラックスの上限値を電波強度と比べることでこの銀河団の平均磁場にも制限をつけた。以上の成果について、学会発表を行った。また、高温銀河団A2163の「すざく」衛星による観測結果について国際会議で口頭発表した。ここまでの私の研究は、銀河団の硬X線放射の起源を突き止めるためには、従来のような単純な放射モデルでは不十分であり、超高温成分までも含めた熱的放射の詳細なモデル化が不可欠であることを示している。このことは銀河団ガスの物理状態や進化の理解において重要なインパクトをもたらす。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
複数の銀河団についてX線観測データの解析を行い、超高温ガスの探査を進めることができた。すでに超高温ガスの存在を確認できた天体もある。一方で、電波SZ効果の観測データ分析の点で当初の計画からやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
ここまでの研究から、硬X線スペクトルデータから銀河団の超高温ガスの存在を確認するためには、従来のような単純な放射モデルではなく、多温度モデルに基づいた詳細な解析が不可欠であることが分かった。そこで今後、サンプル数を増やす工夫として、電波SZ効果については文献値を参照することとし、「すざく」衛星で取得した広帯域X線データの解析とChandra衛星による二次元温度分布の構築を重点的に進める。これにより、系統的な超高温ガス探査を実現する。
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Research Products
(21 results)