2010 Fiscal Year Annual Research Report
半導体超格子におけるテラヘルツ領域コヒーレント現象に対する共鳴結合効果
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22740203
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
長谷川 尊之 兵庫県立大学, 大学院・物質理学研究科, 助教 (00533184)
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Keywords | ブロッホ振動 / 励起子量子ビート / テラヘルツ / ワニエ・シュタルク局在 / ポンプ・プローブ法 / 半導体超格子 |
Research Abstract |
本研究では、半導体超格子のテラヘルツ領域コヒーレント現象(ブロッホ振動と励起子量子ビート)を対象として、超格子構造特有の波動関数共鳴結合がコヒーレント振動に及ぼす影響について解明することを目的としている。平成22年度では、単一量子井戸が埋め込まれたGaAs/AlAs超格子を試料とし、単一量子井戸層に閉じ込められた重い正孔励起子および軽い正孔励起子間の量子ビートダイナミクスを、ファスト・スキャン機構の反射型ポンプ-プローブ分光システムを用いて観測した。試料の印加電圧(電場強度)に対する系統的なポンプ-プローブ分光測定から、単一量子井戸層および超格子層の第1電子状態間での波動関数共鳴結合条件において、励起子量子ビートの振動数および振動強度が複雑に変化することが観測された。波動関数共鳴結合条件での励起子量子ビートダイナミクスを明確に観測したのは本研究が初めてである。電場変調反射スペクトルの測定結果に基づいた解析方法から、共鳴結合条件でのダイナミクス特性の変化は、電子の結合状態および反結合状態の形成に起因する2種類の励起子量子ビートの出現が主要因であることを明らかにした。さらには、2種類の励起子量子ビートの振動強度の比が、共鳴結合条件での遷移エネルギーおよび遷移強度の変化を反映して、電場強度に強く依存することが分かった。本研究成果は、テラヘルツ領域コヒーレント振動の制御に関する新たな知見を与えるものである。平成23年度では、より一般的なGaAs/AlAs超格子を試料とし、ブロッホ振動の波束ダイナミクスに対する共鳴結合効果に焦点を置いて詳細な実験を行う。
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