2011 Fiscal Year Annual Research Report
電子相関を舞台とする非従来型超伝導発現機構の核磁気共鳴法による研究
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22740232
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
川崎 慎司 岡山大学, 大学院・自然科学研究科, 講師 (80397645)
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Keywords | 核磁気共鳴 / 強相関電子系 / 強磁場 / 量子臨界点 / 高温超伝導 |
Research Abstract |
本研究は電子相関の強い物質系における、量子臨界点と非従来型超伝導の関連を、核磁気共鳴法を用いて調べている。本研究年度は、 本研究年度は、2008年に東工大の細野グループによって発見された鉄砒素系超伝導体に注目し、この系の量子臨界点と超伝導について、以下の新しい知見を得た。 鉄砒素系超伝導体LaFeAsO_<1-x>F_xにおいて、x=0.03~0.15という幅広い元素置換量の試料を用いてAs-NQR実験を行った。 1.超伝導転移温度 As-NQR緩和率(1/T_1)及び交流帯磁率測定から、LaFeAsO_<1-x>F_xの超伝導相図が、これまで信じられてきた超伝導転移温度(T_c)が元素置換によらないものとは異なり、母物質の反強磁性相に近い組成でピークを持つ構造であることがわかった。また、その違いは、F濃度の見積もりに起因するものであり、正確なxの評価が重要であることを示した。 2.常伝導状態 T_c以上の1/T_1Tの温度依存性は、量子臨界点近傍の反強磁性スピン揺らぎの理論でよく理解でき、Tcが量子臨界点近傍で最大値をとることがわかった。このことは、鉄の持つ磁性が鉄系超伝導体の高T_c超伝導発現に関与していることを示す結果である。 3.超伝導状態 T_c以下の1/T_1の温度依存性から、この系の超伝導ギャップがフルギャップであることを、NMR実験では初めて明らかにした。以上の結果は今後の鉄系超伝導体の物質開発の指標となると共に、発現機構解明に寄与する重要な結果である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本年度の鉄系超伝導体に関する研究成果は、本研究目的の妥当性、方向性の正しさを証明するものであり、研究目的達成に向け、本研究が順調に進展していると言えるものである。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究はおおむね順調に進展しており、今後もこれまでの成果を生かして研究目的達成を目指すものである。
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