2011 Fiscal Year Annual Research Report
津軽海峡一帯における局地的強風の発生機構と気団変質過程の解明
Project/Area Number |
22740309
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Research Institution | Tohoku University |
Principal Investigator |
島田 照久 東北大学, 大学院・理学研究科, 助教 (30374896)
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Keywords | 海上風 / ヤマセ / 津軽海峡 / 陸奥湾 / 気象シミュレーション / 衛星観測 / 日変化 / 日本海 |
Research Abstract |
本研究課題では、ヤマセ時の東風と冬季の西風を対象として、津軽海峡一帯(津軽海峡と陸奥湾およびその周辺域)における局地的強風の発生機構と気団変質過程を解明することを目的とする。平成22年度の観測データの解析結果をもとに、平成23年度は、数値シミュレーションデータを用いて、ヤマセが津軽海峡一帯を吹き抜ける過程を解析した。2003年6月上旬の継続的な東風事例について、領域気象数値モデルMM5を導入し、水平解像度1kmで大気場をシミュレーションし、1時間毎の出力を解析した。継続的な東風に伴って、オホーツク海高気圧起源の冷気が、津軽海峡一帯の下層約500mに夜間に進入してくる。また、日中は冷気進入が東に後退する。この冷気の進入と後退が、津軽海峡の東側の入り口、陸奥湾中央部、津軽海峡の西部の3カ所で発生する局地的強風の日変化を引き起こすことがわかった。津軽海峡の東側の入り口では、海峡内部の日中の昇温した暖気と、東から流入する冷気が大きな気圧傾度力を生み出し、強風を形成する。陸奥湾では、日中に流入する冷気が下北半島を横切るときに加熱されて厚い混合層を形成する。この層が陸奥湾中央部で薄くなることにより風が加速される。津軽海峡西部では、日本海の暖気と海峡に流入した冷気による大きな気圧傾度力と、下層の冷気層が海峡西部で広がる効果で加速される。海峡を吹き出た風は、日中は、気圧傾度力とコリオリ力が主にバランスするが、夜間は、加速した風によるコリオリ力の増大と冷気流出に伴う気圧傾度力の減少により、地峡風は高気圧性の曲率を持つ。本研究により、津軽海峡一帯におけるヤマセ時の局地的強風と下層の冷気進入過程の全体像がわかった。また、地峡風の規則的な日変化を初めて解析した事例となった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的は、高解像度の衛星観測データと領域数値気象モデルを用いて、夏季のヤマセ(東風)と冬季の季節風(西風)に特に着目し、津軽海峡一帯における局地的強風の発生機構と気団変質過程を解明することである。平成22、23年度には、観測データと領域数値モデルを用いて、夏季のヤマセ時ついての研究を行い、その結果を2つの論文にまとめ、アメリカ気象学会の学術誌に掲載されるに至った。よって、研究計画通りに進んでいる状況にある。平成24年度は、これまでの準備や成果に基づき、冬季季節風時の解析を行う。
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Strategy for Future Research Activity |
平成24年度の目的は、冬季季節風(西風)の卓越時について、高解像度の衛星観測データと領域数値気象モデルを用いて、津軽海峡一帯で発生する局地的強風と気団変質過程を解明することである。平成22、23年度に行った夏季のヤマセ(東風)時の研究にならって、長期間の観測データを利用した統計解析と観測とモデルによる事例研究を行う。平成22、23年度に準備した観測データと領域数値気象モデルを利用することができる。そして、ヤマセ(東風)と冬季季節風(西風)の卓越時の強風事例を比較し、局地的強風の発生に対する、津軽海峡一帯の地形や海洋の影響を総合的に考察する。また、夏季と冬季の局地的強風が地域気候に与える影響を明らかにする。これにより、夏季と冬季の局地的強風と気団変質過程について、津軽海峡一帯における全体像を初めて完成させる。
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