2010 Fiscal Year Annual Research Report
落雷特性を規定する雷雲の雲微物理構造とその形成過程に関する観測的研究
Project/Area Number |
22740312
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Research Institution | National Research Institute for Earth Science and Disaster Prevention |
Principal Investigator |
出世 ゆかり 独立行政法人防災科学技術研究所, 水・土砂防災研究部, 任期付研究員 (80415851)
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Keywords | 落雷 / 雷雲 / 雲微物理構造 / 偏波レーダー |
Research Abstract |
夏季に発生する落雷の特性とそれを規定する雷雲の雲微物理構造を調べるため、本研究では、落雷の発生数が多い濃尾平野で観測された雷雲を研究対象とした。当該年度はまず、平成20年度と平成21年度の暖候期(主に6月から10月)に中部電力の落雷位置標定システムで観測された全落雷の特性を統計的に調査し、夏季の落雷の70%以上が負極性であることを確認した。また落雷発生日の全ての降水システムの特徴を気象庁レーダーと名古屋大学の偏波レーダーの情報を使って調査したところ、ほとんどの落雷日において対流性の孤立雲または対流性の降水システムが発生しており、落雷日の7割以上は負極性落雷が卓越していた。その中で2009年10月8日に台風0918号の中心付近で発達した対流雲では、短時間(30分程度)に多くの落雷が発生しその97%が正極性落雷と、本研究で対象とした雷雲の中では正極性落雷率が著しく高いことが分かった。この対流雲について2台の偏波レーダーによる観測に成功したため、対流雲内の降水粒子分布と気流構造について詳細な解析を行った。落雷は対流雲が急発達しエコー頂が14kmを超えた後に活発化した。また落雷期間には湿ったあられが対流雲上空の0度から-20度の領域に広がっていたことを偏波レーダーパラメータの3次元分布に基づいて示した。さらにこのあられの成長過程をふまえて、湿ったあられが正に帯電したことでこの対流雲では正極性落雷が卓越したことを指摘した。暖候期に正極性落雷が卓越する雷雲については海外でも報告例が少なく、国内ではこれまでほとんど調査されていなかったため、解析結果について国際学会で発表した。
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Research Products
(3 results)