Research Abstract |
岩石表面に水滴が落ちる箇所では,凹みが出来ている様子がしばしば観察される.これは水の作用による岩石の風化現象であり,鉱物粒子の粒界の溶解(化学風化)と,粒子の分離(物理風化)の複雑な相互作用の結果として進行すると考えられる.本年度は,このような岩石への水の滴下による風化現象を模擬した実験を行った.試料には,フォンテーヌブロー砂岩(フランス産,F砂岩,粒径:約300μm)と,ベレア砂岩(アメリカ産,B砂岩,粒径:約200μ)を用いた.内径6cmのアクリル製の筒を直立させて,筒内の下方に成形した砂岩試料を固定し,高さ50cmの位置から水を流して試料表面に滴下させた.試料に当たった水は筒の底部にたまり,それを再びポンプで吸い上げて試料に滴下することで,水が循環するようにした.実験開始後,溶解が進行し,溶存元素濃度が上昇した.この濃度の変化から,化学風化量を求めた.また,実験前後の試料の重量変化彙(物理風化+化学風化)から化学風化量を差し引くことで,物理風化量を求めた.それぞれの岩石について,25℃で約2週間風化実験を行った結果,各試料の単位外形面積当たりの溶解(化学風化)量は,F砂岩で0.03mgcm^<-2>,B砂岩で0.1mgcm^<-2>であった.また,粒子の分離(物理風化)量は,F砂岩で0.5mgcm^<-2>,B砂岩で0.4mgcm^<-2>であった.B砂岩と比べると,F砂岩の方が脆く粒子が分離しやすいことを反映して,F砂岩の方が物理風化の寄与が大きい.また,特にB砂岩については,溶解量の大部分をCaとMgが占めており,それらの塩の溶解により鉱物粒子同士の結合が弱化し,その後粒子が分離するというプロセスの繰り返しで風化が進んでいる可能性が考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前年度・今年度の研究で,実験手法の整備を行い,静的条件,波がかかる条件,水滴が当たる条件,pHを変えた条件など,様々な環境条件での物理風化・化学風化実験を行った結果,実験データはおおむね揃いつつある.来年度は,これらの結果を基にさらに改良を加えた実験を行い,全体をまとめる予定である.
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Strategy for Future Research Activity |
化学風化速度と物理風化速度の比較という点では,すでにおおむね傾向を把握できる実験データが得られている.しかし,これまでの風化実験においては,はっきりと試料の外形の変化が視認できる程度の風化量が得られていない.今年度は,風化量を上げるための工夫を行う.具体的には,水の滴下を模擬した実験において,水を滴下させる高さを上げる,流速を上げるなどを行って,試料に与える衝撃を増やす.その上で,試料の3次元形状の変化を定量的に評価し,浸食の広がり方の特徴を調べる。また,衝撃の強さと物理風化速度・化学風化速度の相関についても検討する.これらの結果を元に,化学風化と物理風化の相互作用のメカニズムや速度を総合的に解釈する.
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