Research Abstract |
磁場閉じ込め型のプラズマ核融合実験装置では,ダイバータ領域へネオン,アルゴンなどの希ガスや,水素,窒素,炭化水素などの分子ガスを外部から導入し,放射損失と分子活性化再結合を組み合わせることでプラズマ対向壁の熱負荷を低減する方法が検討されている.この際,炉心プラズマ性能を低下させないような周辺プラズマ制御が必要となるが,そのためには周辺部の原子分子の動的挙動を表す物理量である,温度,流速,密度を測定し,制御にフィードバックすることが必要となる.本研究の目的は,二原子分子発光スペクトルのゼーマン分裂を利用することで,受動的な発光分光法単独で二原子分子の温度(並進,振動,回転),流速,密度の局所計測を行うことである.研究計画の2年目かつ最終年度の本年は,(1)磁場閉じ込め装置での計測法の有効性の検証,を実施した.また,当初の研究計画以外の派生課題として,(2)水素同位体炭化水素分子スペクトルの分子定数評価,を実施した.以下に(1),(2)の詳細を述べる. (1)実験は核融合科学研究所のLHDを利用して行った.径方向視線でプラズマからの発光を集光し可視分光器,冷却CCDによりスペクトルを測定した.ダイバータタイルに利用されている炭素繊維複合材に起因すると推測されるCH分子A^2△-x^2II帯発光スペクトルが観測された.前年度に開発した磁場中の二原子分子発光スペクトル形状計算コードを利用し磁場強度特定を試みたが,波長分解能の不足のため有意な結果を得るまでには至らなかった. (2)核融合装置では重水素,トリチウムの利用により水素同位体を含んだ二原子分子が生じるが,これらの分子の多くに関しては精度の良い分子定数データが存在せずデータ整備が課題となっている.そこで本研究で開発した計算コードを利用してCD分子A^2△準位の振動回転分子定数の評価を行った.京都大学の設備を利用し,重水素化メタンガスを封入したグロー放電を用いてCD分子発光スペクトルを可視分光器と冷却CCDにより測定した.測定結果を計算結果と比較し振動回転定数を求めた.
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