2010 Fiscal Year Annual Research Report
電気的・力学的緩和法によるポリマー電解液の輸送物性の研究
Project/Area Number |
22750012
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
山口 毅 名古屋大学, 工学研究科, 助教 (80345917)
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Keywords | 電解液 / 高分子 / 電気伝導度 / 粘性 / 誘電緩和 |
Research Abstract |
分子量500のポリエチレングリコールジメチルエーテル(以下PEO)とテトラグライム(以下TEG)に過塩素酸リチウムを溶解させた電解液の粘性緩和スペクトルと電気伝導度分散をそれぞれ5~205MHz、300kHz~20GHzで測定した。粘性緩和においては、TEG系では測定周波数域に緩和は測定されなかった。一方PEO系では、純溶媒で100MHz近傍に溶媒分子鎖の全体的運動に帰着される緩和が測定され、塩濃度の増加と共に、緩和周波数は変化せず、緩和強度が増加した。また、10MHz近傍に、純溶媒では見られなかった緩和が出現し、塩濃度の増加と共にその強度が増大した。電気伝導度分散においては、PEO系で100MHz近傍に、TEG系では数100MHz近傍にイオンの並進運動に起因すると考えられる緩和が見られたが、粘性緩和とは異なり、その緩和周波数は塩濃度と共に増加した。我々がこれまで行ったシミュレーションによる研究によって、電気伝導度の同様な緩和は、溶媒からイオンに働く摩擦がマルコフ的であっても、イオン間相互作用によって生じることが示されており、本研究で100MHz付近に見られた電気伝導度分散の緩和はイオン間相互作用に起因するものと結論された。この結論は、PEO系とTEG系で、周波数と伝導度を規格化したスペクトルが一致することからも支持された。すなわち、溶媒分子鎖の全体的運動はイオンの並進運動とは独立していることが示された。また、誘電緩和で数GHzに見られる溶媒の局所運動の緩和周波数が直流伝導度と同様の濃度依存性を示すことから、イオンの易動度を支配しているのは溶媒の局所運動であることが分かった。
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