2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22750060
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Research Institution | Toho University |
Principal Investigator |
松川 史郎 東邦大学, 理学部, 准教授 (90448259)
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Keywords | 錯体化学 / 酸化還元反応 / 典型元素 / 遷移金属 |
Research Abstract |
ポルフィリンは18π電子系を有する芳香族化合物であり、大きく広がったπ共役系をもつ平面分子である。このような分子は比較的容易に複数段階の酸化・還元反応を起こすが、2電子酸化状態や還元状態は一般的には安定ではない。我々は近年、嵩高い置換基を導入してポルフィリン骨格を歪ませることで、非常に珍しい2電子酸化状態(16π)の非芳香族性ポルフィリン誘導体ORTPP(R=Et,i-Bu)の単離に成功したが、溶液中ではそれほど安定ではないことがわかった。このような歪んだポルフィリンは、従来の平面型ポルフィリンよりも電子の授受が容易であることを示しており、有機電子デバイス素子としての応用という点で興味深い。そこで、本研究では16π状態をさらに安定化するための手段として、π供与基を導入した新たなドデカ置換誘導体の合成を検討した。π供与基として、β位にメトキシ基を持つ誘導体と、meso位に5-メチル-2-チエニル基を持つ誘導体の合成を検討したところ、メトキシ誘導体の方は、単離には到っていないものの16π酸化体の形成を観測することができ、溶液中でもある程度の安定性を持っていることがわかった。しかしながら、チエニル誘導体については、非常にジプロトン化されやすいために16π状態を観測することができなかった。チエニル誘導体がジプロトン化されやすいことは、酸化体ではなく、逆に2電子還元体(20π)状態が安定に存在する可能性を示唆していると考え、現在20π還元体の合成を検討中である。また、β-オクタアルキル-meso-テトラチエニルポルフィリンのニッケル錯体の合成と、単結晶X線解析に成功した。その結果、meso-テトラフェニル誘導体と比べて歪みが大きいことがわかった。この結果は、meso-テトラチエニル誘導体が非芳香族状態への良い前駆体となり得ることを示している。
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[Journal Article] Synthesis, Characterization and Spectroscopic Analysis of Antiaromatic Benzofused Metalloporphyrin Species2012
Author(s)
Shun Sugawara, Yusuke Hirata, Satoshi Kojima, Yohsuke Yamamoto, Eigo Miyazaki, Kazuo Takimiya, Shiro Matsukawa, Daisuke Hashizume, John Mack, Nagao Kobayashi, Zhen Fu, Karl M. Kadish, Young Mo Sung, Kil Suk Kim, Dongho Kim
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Journal Title
Chem. Eur. J.
Volume: 18(12)
Pages: 3566-3581
DOI
Peer Reviewed
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