Research Abstract |
生体内のタンパク質3分子間相互作用をリアルタイム検出する発光プローブ分子の開発を行った.具体的には,ウミシイタケ由来ルシフェラーゼ(Rluc)を利用し,3分子のタンパク質が相互作用して初めて発光活性を回復するキメラタンパク質分子を開発した. Rlucを3断片(Rα,Rμ,およびRω)に分割する.この3断片Rlucに,3種類のタンパク質Gタンパク質αサブユニット,βサブユニット,γサブユニット(それぞれGα,Gβ,Gγ)を連結したキメラタンパク質(それぞれGα-Rμ,Gβ-Rω,Gγ-Rα)をコードするcDNAを作製した.Gα-Gβ-Gγ複合体形成に基づきRlucの3断片が近接すると発光活性が回復する.この発光活性を指標に,タンパク質複合体形成を可視化検出する. GPCRのひとつADRA2Aを発現する培養細胞にGα-Rμ,Gβ-Rω,およびGγ-Rαを発現させた. ADRA2AにリガンドのUK14304が結合するとGα-Gβ-Gγ複合体形成を阻害するが,リガンド非存在下では複合体形成を誘導することが知られている.前述の培養細胞をUK14304で刺激して生物発光のリアルタイム計測を行ったところ,すぐさま発光強度は減少し,約2.5時間で未刺激細胞からの生物発光の水準まで回復した.これは,すでに報告されているGタンパク質の解離から複合体再形成までの時間とよく一致する.このことから,開発したRlucの3断片を用いれば,可逆的なタンパク質複合体形成-解離をリアルタイムで可視化検出できるといえる. 生物発光不活性な3断片に分割したRlucを用い,Gタンパク質複合体の可逆的な形成-解離をリアルタイムで検出できることを実証した.ここでGタンパク質複合体形成-解離を実施例として可視化検出したが,本手法のデザイン・コンセプトは,他のタンパク質複合体形成のリアルタイム検出にも応用可能である.
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