Research Abstract |
本研究では,低レイノルズ数条件(Re<2.0)下での,蛇行流路内の粘弾性流体流れにおける熱流動特性の解明を目的として,熱伝達率と圧力損失の定量的な評価,PIV計測による流速測定と流れの可視化測定を行った.作動流体としては粘弾性流体であるポリアクリルアミド(PAAm)水溶液と,ニュートン流体であるスクロース水溶液の2種類を用いて,物性値の詳細な測定を基に実験を行った.その結果,PAAm水溶液の伝熱実験では,同一Re条件でも,スクロース水溶液の場合と比較して,Nuが著しく増加することが分かり,蛇行流路と粘弾性流体を用いることで,伝熱促進効果が得られることを初めて示した.また,NuをReで整理した場合,Nuの増加が開始するReの値は,スクロース濃度が異なる場合で変化することがわかった.一方で,ワイゼンベルグ数Wiで整理した場合は,スクロース濃度に関わらず,増加開始値はWi>35となり,WiによりNu分布を整理できることを示した。可視化実験においては,PAAm水溶液では,低流速では定常流れでかつ2次渦流れがないことが確認され,流速が増加すると,Re=2.0の条件下でも流れが非定常となり,流路の上方と側方から同時に流脈線を観察した結果,主流方向の縦渦が生成されることが分かった.主流方向と流路高さ方向から測定したPIV計測でも,この縦渦は観測され,特に蛇行流路の変曲点やや下流において強い双子渦が観測された.変動強さについては,変曲点下流にて同様に高い値を示す一方,蛇行流路の湾曲部では,比較的低い値を示した.この渦の強さおよび変動強さと,Nuの間では相関が見られ,伝熱促進が渦の生成とその変動に起因することを明らかにした.これらの結果は,研究目的である,流動特性の解明,伝熱と圧力損失性能の評価,そして無次元数による整理にそれぞれ対応する.このような測定は,未だ行われておらず,低レイノルズ数領域における伝熱促進技術としての有効性と,流路と流動条件に関する設計指針を示す点で意義が深い.
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