2011 Fiscal Year Annual Research Report
断層極近傍の塑性化に伴う特徴的な地震動の生成メカニズムの分析
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22760346
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
後藤 浩之 京都大学, 防災研究所, 助教 (70452323)
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Keywords | 地震工学 / 防災 / 地震 / シミュレーション工学 |
Research Abstract |
昨年度までに,断層極近傍の塑性化を考慮して断層破壊シミュレーションを実行できるような数値解析手法である動的拡張有限要素法(X-FEM)の開発と,またその手法を利用したパラメータスタディによって,地表断層を伴う地震(地表断層地震)と地表断層を伴わない地震(潜在断層地震)の生成メカニズムの分析を進めてきた.断層極近傍の塑性化の影響も少なくないが,主として断層の生成メカニズムに寄与するものは破壊開始点(震源)の相対的な深さであることが明らかとなった.破壊開始点から深部方向に広がった破壊フロントが断層端に達すると,断層端から破壊停止フロントが進展する.同時に破壊開始点から浅部方向に広がる破壊フロントが深部から進展する破壊停止フロントに追いつかれると破壊の成長が停止して潜在断層地震となるが,破壊フロントが先に地表に達すると地表断層地震となる.このようなシミュレーションの結果それぞれの地震で生成された地震動の特徴は既往の研究で整理されていた地震動の特徴をよく表しており,このメカニズムの妥当性が検証された.断層極近傍の塑性化による影響は破壊フロントの伝播速度を低減させる効果として表れるため,浅部地殻にその効果を導入することによってより潜在断層が生成しやすい条件を設定することができる.なお,本メカニズムで生成されるそれぞれの地震断層の滑り量分布と応力降下量分布は,過去の逆断層型内陸地殻内地震の特徴によく整合していて,地表断層地震では浅部に大きな滑り量が位置する傾向,潜在断層地震では破壊開始点付近か直上に滑り量の大きな領域が位置する傾向が再現された.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
一昨年度に開発した数値解析手法を用いて,パラメータスタディを実施した結果,観測事実に適合するようなメカニズムをシミュレーションすることができた.メカニズムの細かい部分は当初の想定(仮説)とは異なるが,目的としていたものを表現できたことは順調な進展だと考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
本年度(最終年度)はパラメータの影響をより精密に評価して,潜在断層地震と地表断層地震の本質的な違いを明らかにすることが1つの目標である.また,昨年発生した東北地方太平洋沖地震は,広義の意味で地表断層地震に分類されると考えられるため,今までの知見を援用することで理解できるのか検討を進めることも目標である.
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Research Products
(7 results)