Research Abstract |
本年度はゲリラ豪雨時の斜面崩壊メカニズムと考えられる土中への雨水浸透挙動の把握のために改良を加えたサンドカラムを用いた降雨実験を実施した.水収支の正確な把握のため,浸透能を超えて浸透しない雨水を集水するための機構を新たにサンドカラム上部に新たに加えた.本実験の新規性は,ゲリラ豪雨の特徴である強い降雨強度および大きな雨滴粒径を考慮している点および不飽和土への雨水浸透における間隙空気の挙動の把握を行っている点である.本実験より,雨滴の大きな強い降雨強度の雨は土中の空気との置換が滞ることにより空気圧が上昇し,雨水浸透挙動が妨げられる.その結果,地中深くまで飽和域は進展せず,斜面においては表面流の発生が起こることがわかった.すなわち,浸透による破壊より表面侵食による破壊が卓越するものと考えられる.一方,ゲリラ豪雨のように,降雨強度が急激に変化する降雨に対しては,計測間隔のより短いリアルタイム計測が必要であり,本研究では,前年度開発した超音波レベル計およびレーザー変位計を用いたリアルタイム雨量計について原位置での計測のために必要な改良を行った.太陽光パネルを用いた自己発電型のシステムとし,雨滴センサーによって降雨を感知し,システムに電源が入るといった省電力のリアルタイムシステムを構築した.計測された雨量は,浸透流解析において,降雨入力条件として用い,土質材料の不飽和浸透特性とともに評価することで,ゲリラ降雨の雨水浸透挙動のシミュレーションを実施した.解析の結果,これまでの通常の降雨時の雨水浸透挙動との相違が見られ,間隙空気圧を考慮した解析の必要性,および降雨境界条件の設定方法(リアルタイム計測の必要性)について検討を行った.また,本年度は,豪雨により表層崩壊を起こした斜面について,その再現解析を行い,降雨外力の与え方の影響および表土の不飽和浸透特性が雨水浸透挙動および斜面の安定性評価に与える影響について調べた.本研究で提案する,飽和・不飽和浸透流解析と円弧すべり解析を組み合わせた手法に現場計測より得られる高精度な気象情報を組み合わせることで,ゲリラ豪雨時の斜面安定性が評価でき,危険度予測につながるものと考えられる.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ゲリラ豪雨時の雨水浸透挙動に関する現象の把握,メカニズムの解明に関する基礎実験を中心に行い,従来の計測方法の問題点を指摘するとともに,ゲリラ豪雨対応型の計測のあり方について多くの知見を得た.また,ゲリラ豪雨時の斜面安定性評価については,高精度な気象情報の把握および現況把握のためのモニタリングの必要性について過去の斜面崩壊事例を用いて議論することができた.開発したリアルタイム雨量計により,高精度な気象情報の把握でき,降雨外力として数値解析に用いることでより精度の高い斜面安定性評価につながると考えられる.
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Strategy for Future Research Activity |
今後は,ゲリラ豪雨時の斜面の現況把握のためのモニタリングおよび地質調査(地盤物性の把握,特に表土の不飽和浸透特性の把握)のあり方について更なる検討を加える必要があると考えられる.また,斜面安定解析においては,リアルタイムモニタリングより得られるデータを逆解析的に用いることで,解析モデルの再構築を行い,より精度の高い斜面安定性評価および危険度予測につなげていく必要がある.最終年は,これまでの個々の成果(モニタリングから解析まで)を統合することで,統合型地下水解析手法の確立を目指し,実斜面を用いて検証を実施する予定である.
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