2010 Fiscal Year Annual Research Report
クジャク属と近縁種における求愛ディスプレイ形質の系統再構築と性差の進化の解明
Project/Area Number |
22770014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 麻理子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特任研究員 (90422378)
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Keywords | 行動学 / 生態学 / 進化 / キジ科 / 繁殖 |
Research Abstract |
キジ目キジ科の鳥、クジャク属とその近縁種(5属を合わせてpavonineクレードと呼ぶ)のオスは、長い羽、羽の目玉模様とその誇示、鮮やかな体羽と肉質形質、求愛のための音声など様々な装飾形質を持つが、その特徴や性差の種間バリエーションも著しい。本研究の目的は、野外での繁殖行動の観察と分子系統樹に基づく系統再構築によって、このクレードに多様な装飾形質と性差をもたらした進化的要因を理解することである。また、絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されている研究対象種の繁殖生態を定量的に調査し、保全の一助とすることも目的とする。平成22年度は、クレードを構成する5属のうち、特にクジャク属を調査した。これまでに、ケージ飼育されているインドクジャクとマクジャクを対象に、2種の同時観察とマクジャクの追加観察を行い、求愛行動を2種間で比較した。その結果、オスがメスに羽の目玉模様をディスプレイする行動が2種間で酷似した一方、オスが求愛のために発する音声の種類、頻度、それらの性差はインドクジャクで顕著に大きかった。その他の観察や先行の知見と合わせて、本属の求愛ディスプレイ形質の祖先状態を推測すると、1.オスの羽の装飾的な目玉模様とそのディスプレイ行動は本属の共通祖先形質であり、大変古いこと、2.現在見られるようなインドクジャクの羽色の性差は、最近オスが派手に変化したためではなく、最近メスが地味に変化して生じたこと、3.求愛のための音声はインドクジャクのオスで特に発達し、インドクジャクのメスで特に少なく変化したこと、などが示唆された。
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