2011 Fiscal Year Annual Research Report
クジャク属と近縁種における求愛ディスプレイ形質の系統再構築と性差の進化の解明
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22770014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 麻理子 東京大学, 大学院・総合文化研究科, 特任研究員 (90422378)
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Keywords | 行動学 / 生態学 / 進化 / キジ科 / 繁殖 |
Research Abstract |
キジ目キジ科の鳥、クジャク属とその近縁種(5属ll種を合わせてpavonineクレードと呼ぶ)のオスは、長い羽、羽の目玉模様の誇示、音声など様々な求愛ディスプレイ形質を持つが、その特徴や性差の種間バリエーションも著しい。このような複数のモダリティを利用する複雑な求愛シークエンスは、段階的に獲得された進化の産物だろう。 本研究の目的は、野外における繁殖行動の観察と分子系統樹に基づく系統再構築によって、このクレードに多様な装飾形質と性差をもたらした進化的要因を理解することである。また、絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されている研究対象種の繁殖生態を定量的に調査し、保全の一助とすることも目的とする。 平成23年度は、このクレードを構成するクジャク、セイラン、コクジャクの3つのリネージのうち、特にセイランリネージ(セイランとカンムリセイラン)について音声の分析を行った。これまでに、動物園でケージ飼育されているセイランとカンムリセイランを対象に計約100時間の観察を行い、録音された音声について2種間で比較した。 その結果、セイランリネージの2種では周波数変調の大きなオスの音声が類似しており、また、少数例ではあるが同種のオスとメスが比較的類似した音声を使って鳴き交わす様子が観察された。先に調査したクジャクリネージでは、マクジャクで両性の鳴き交わしが観察され、コンゴクジャクでも両性が鳴き交わすという情報を得た一方、インドクジャクでは観察されていない。これらのことから、両性による鳴き交わしは、セイランとクジャクの2つのリネージの共通祖先形質で、後にインドクジャクにおいて消失した、という進化的パスウェイが予測される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の対象であるキジ目キジ科pavonineクレードは、クジャク、セイラン、コクジャクの3つのリネージによって構成されるが、平成23年度末までに、クジャク、セイランの2つのリネージのほぼ全ての種の求愛行動と音声について、基本的な情報を得ることができた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、研究代表者の管理下にない生物を対象としている。そのため、申請時に入手した飼育情報に基づいて立てられた研究計画が、動物の死亡等の理由により変更されることがあった。また、分析に必須の行動記録を得るために、一種に対して計画より多くの(複数年度にまたがる)調査が必要になる事態も生じている。本研究の最終目標は、研究対象11種の網羅的な系統再構築だが、これを達成するための前提として、個別の種の調査結果をまず確実にまとめていくことが最も重要と考え、そのために必要な追加調査は優先的に実施している。今後も、計画時に設定した調査の順序にこだわらず、状況に応じて各年度の計画を適宜変更し、年度間で調整しながら進めていきたい。
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Research Products
(1 results)