2012 Fiscal Year Annual Research Report
クジャク属と近縁種における求愛ディスプレイ形質の系統再構築と性差の進化の解明
Project/Area Number |
22770014
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
高橋 麻理子 東京大学, 総合文化研究科, 特任研究員 (90422378)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 行動学 / 生態学 / 進化 / キジ科 / 繁殖 |
Research Abstract |
キジ目キジ科の鳥、クジャク属とその近縁種(5属11種を合わせてpavonineクレードと呼ぶ)のオスは、長い羽、羽の目玉模様の誇示、音声など様々な求愛ディスプレイ形質を持つが、その特徴や性差の種間バリエーションも著しい。このような複数のモダリティを利用する複雑な求愛シークエンスは、段階的に獲得された進化の産物だろう。 本研究の目的は、野外における繁殖行動の観察と分子系統樹に基づく系統再構築によって、このクレードに多様な装飾形質と性差をもたらした進化的要因を理解することである。また、絶滅危惧種や準絶滅危惧種に指定されている研究対象種の繁殖生態を定量的に調査し、保全の一助とすることも目的とする。 平成24年度は、このクレードを構成する3つのリネージにまたがって、クジャクリネージに含まれるマクジャク、セイランリネージに含まれるセイラン、コクジャクリネージに含まれるハイイロコクジャクの3種の調査を実施した。動物園でケージ飼育されているマクジャクのペア、セイランのメス、ハイイロコクジャクのペアを対象に約80時間の観察を行い、現在までにマクジャクの求愛行動の分析を終了した。 その結果、(i)マクジャクのオスが目玉模様の付いた羽を使って行う求愛行動はインドクジャクのオスの求愛行動と酷似しており、個体差を超える種間差が見られないこと、(ii)繁殖期に特有のマクジャクのコールを5種確認し、マクジャクのコールの諸特徴の性差がインドクジャクと比較して非常に小さいこと、などが明らかになった。これらは平成23年度までに調査された別の2つの調査地の結果とよく一致しており、クジャク属2種の求愛ディスプレイ形質の比較について、高い妥当性を持つ結果を得ることができた。ハイイロコクジャクとセイランの調査結果については現在分析を行なっている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の対象であるキジ目キジ科pavonineクレードは、クジャク、セイラン、コクジャクの3つのリネージによって構成されるが、平成24年度末までに各リネージに属する複数の種の求愛行動の調査に着手し、そのほぼ全ての種でそれぞれ複数の調査地から記録を収集することができた。これによって本研究は、個別の種の求愛行動の基本的な情報を得る段階から、各調査結果の妥当性も確認することのできる段階に移ってきており、おおむね順調に進展していると考える。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究は、研究代表者の管理下にない生物を対象としている。そのため、申請時に入手した飼育情報に基づいて立てられた調査計画が、動物の死亡等の理由により変更される事態が少なからず生じた。また、ある形質の種間差の考察には、比較される個別の種についてより多くの個体の記録に基づいて分析することが望ましく、高い妥当性を持つ結果を公表するために、一種に対して申請時の計画より多くの(複数年度にまたがる)調査が必要になる事態も生じている。本研究の最終目標は、研究対象11種の網羅的な系統再構築だが、これを達成するための前提として、個別の種の調査結果を順番に確実にまとめていくことが最も重要と考え、次年度(最終年度)も、そのために必要な追加調査を優先して実施する。
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Research Products
(2 results)