2010 Fiscal Year Annual Research Report
ヘビ類の嗅覚受容体遺伝子の機能とウミヘビの同所的種分化の分子的基盤に関する研究
Project/Area Number |
22770082
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Research Institution | Kyoto University |
Principal Investigator |
岸田 拓士 京都大学, 理学研究科, 研究員(グローバルCOE) (40527892)
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Keywords | 嗅覚 / 進化 / 海洋性羊膜動物 / ヘビ亜目 |
Research Abstract |
バヌアツ共和国にサンプリングに赴き、現地政府からの調査・採集許可証の交付を受けた上でバヌアツアオマダラウミヘビLaticauda frontalis、アオマダラウミヘビL.colubrinaおよびヒロオウミヘビL.laticaudata(全て卵生のウミヘビ)の採集を行った。また、沖縄本島周辺でクロガシラウミヘビHydrophis melanocephalus、イイジマウミヘビEmydocephalus ijimae(以上胎生ウミヘビ)、ヒャンSinomicrurus japonicus(コブラ科の陸上性ヘビ類)およびヒロオウミヘビの採集を行い、組織化学的な観察を行うための組織固定やDNA、RNAの抽出を行った。羊膜動物の嗅覚器官は大きく二つ、主嗅覚系(主嗅覚器)と副嗅覚系(鋤鼻器)とに分類することができる。今回サンプリングを行った全てのヘビ類で鋤鼻器の存在が確認されたが、陸上環境に一切依存しない胎生のウミヘビ類からは、十分に発達した主嗅覚器が存在しない可能性が示唆された。鯨類や海牛類などの海洋性の哺乳類では、海洋環境への適応に伴って、副嗅覚系が進化的に先に失われたことが知られているが、ウミヘビ類ではその順序が逆であり、このことから、ヘビ類と哺乳類とでは副嗅覚系の機能が異なっていることが推測された。また、得られたDNAから嗅覚受容体遺伝子の単離を行い、一部をシーケンサーで解読して同じ配列の重複取得回数を計上した結果、嗅覚受容体遺伝子の全レパートリーの90%を解読するためには1種あたりおよそ2000回ものシーケンスを行う必要があることが判明した。このため、解読のコストを考えて、配列解読に次世代シーケンサーを利用する。京都大学グローバルCOE(A06、進化と生物多様性)の次世代シーケンサー運営委員会に本計画を諮問し、次年度の利用が許可された。
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Research Products
(3 results)