2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22770153
|
Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
山本 等 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 研究員 (40419007)
|
Keywords | 1分子計測 / 蛋白質 / 生体膜 / 膜透過ダイナミクス / 生物物理 |
Research Abstract |
【研究目的】細胞内ではタンパク質の膜透過や膜組み込みは小胞体膜で進行する。本研究課題は、(1)タンパク質の小胞体膜透過を全反射蛍光顕微鏡を用いて可視化・一分子レベルで計測し、(2)そのダイナミクスをリアルタイムかつ定量的に明らかにすること、さらに(3)膜貫通配列およびその近傍配列を系統的に改変したモデルタンパク質の解析により、これらの配列が膜透過ダイナミクスに与える影響を解明することを目的とする。 【研究成果】平成22年度は、上記(1)の観察条件の確立を試みた。小麦胚芽抽出物無細胞合成系でサプレッサーtRNA法により、蛍光色素HiLyte Fluor 488で標識したイヌ膵臓ミクロソーム膜透過中間体を作成し、これを段階希釈して蛍光顕微鏡で観察した。その結果、タンパク質膜透過中間体に付加した蛍光色素に由来する蛍光を個別に観測できた。さらに消光剤DABCYLの添加によってその蛍光を消光することができた。一方、主に消光剤に由来するバックグラウンド光およびラベル色素の低い蛍光強度のためにシグナル/ノイズ比が低いことが分かった。上記(2)および(3)のダイナミクス解析には、消光状態から蛍光状態への蛍光強度変化を広いダイナミックレンジで一定時間測定する必要があるため、消光剤・蛍光色素などの検討によりシグナル/ノイズ比と蛍光寿命の改善が次年度の課題として明らかになった。 【意義・重要性】これまでの研究では、無細胞合成系で蛍光色素標識した膜透過中間体は電気泳動法および蛍光イメージスキャナによって解析してきたが、平成22年度の研究によって、実際に一分子計測可能な量の膜透過中間体が合成されており、個々の中間体に由来する蛍光を全反射蛍光顕微鏡の視野中で個別で観察できた意義は大きい。平成23年度では、シグナル/ノイズ比と蛍光寿命の改善を行い、一分子計測によるタンパク質膜透過のダイナミクスの解析を目指したい。
|