2010 Fiscal Year Annual Research Report
変異体を用いたウシチトクロムc酸化酵素の水素結合ネットワークの機能解析
Project/Area Number |
22770155
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Research Institution | University of Hyogo |
Principal Investigator |
網中 良太 兵庫県立大学, 大学院・生命理学研究科, 助教 (30467724)
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Keywords | タンパク質 / 酵素 / 核酸 / チトクロムc酸化酵素 |
Research Abstract |
細胞呼吸系の末端酸化酵素であるチトクロムc酸化酵素は、酵素分子を還元し水を形成するとともに、プロトン(H^+)をポンプする。ウシと細菌酵素のX線結晶構造解析により両者の間で相同な3つの水素結合ネットワーク(D-、K-、H-path)が明らかにされた。本研究では、ウシ酵素D-pathの機能を検討するために、HeLa細胞を利用したウシ・ヒト雑種酵素の発現系を用いて変異体解析を行った(Asn98Asp、Asn163Asp、Glu242Gln)。Asn98Asp、Asn163Aspに対応した変異は、細菌酵素においてH^+ポンプ活性のみが消失し、D-pathway H^+ポンプ説を支持する。一方、Glu242Glnに対応した変異は、酵素活性が消失し、D-pathwayが水形成用H^+を輸送することを支持する。ウシ酵素でのAsn98Asp、Asn163Asp変異は、H^+ポンプ活性および酸素還元活性に影響を与えなかった。これは、細菌酵素の結果と異なる。そこで、宿主内での新たな変異による機能復帰の可能性を検討するため、各サブユニットDNAの塩基配列の決定を行った。13サブユニットのうち機能を担う3サブユニットと他の2サブユニットの配列が決定でき、Sub1に導入した変異を除き、新たな変異は認められなかった。Glu242Gln変異は、予備的な実験では酵素活性を消失した。これは、ウシ酵素D-pathが水形成用H^+を輸送することを示唆する。以上の結果より、ウシ酵素D-pathは水形成用H^+を輸送するが、ポンプ用H^+は輸送しないことが示唆された。
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