2012 Fiscal Year Annual Research Report
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22770191
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
堤 弘次 北里大学, 理学部, 助教 (50569853)
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Project Period (FY) |
2010-04-01 – 2014-03-31
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Keywords | 細胞骨格 / 細胞極性 / 微小管 / アクチン繊維 / 翻訳後修飾 / シグナル伝達 |
Research Abstract |
複雑な生物の個体が形成される機構の解明は現代の生物学の根底的な問題である。細胞生物学的には、細胞という単位に着目してほぼ対称な卵から複雑な細胞の形態が生み出される機構の解明として捉えなおすことが一般的である。細胞の形態形成には細胞骨格が重要である。本研究の目的はポリグリシン化とよばれる機能未知のユニークな翻訳後修飾による微小管機能制御機構を明らかにすることである。前年度作製したグリシン化酵素TTLL8に体する抗体を用いたウェスタンブロットによる解析によりグリシン化チュブリンが多く局在する精巣の精子鞭毛分画にTTLL8が局在することを明らかにした。しかし、様々な条件検討を行ったが免疫染色で内在性のTTLL8を染色することは難しかった。ここまでの研究成果は第64回日本細胞生物学会合同大会において発表を行った。今年度6月から現在の所属である北里大学への移籍に伴い、実験動物や実験設備の変更にともない当初の研究計画の変更を余儀なくされた。現在の所属先ではアクチン細胞骨格による細胞の極性形成制御機構の研究を開始した。低分子量GTPase RhoAとRac1は細胞内にそれぞれ異なる形態のアクチン繊維を形成することで細胞内に極性を形成する。FilGAPはRhoAの下流でリン酸化され活性化するRac1の不活性化因子であり、RhoAとRac1の活性のバランスを調整することで細胞極性を形成する。FilGAPにリン酸化依存的に結合するタンパク質を探索し候補タンパク質を単離することに成功した。同定したFilGAP結合タンパク質(FilGAPBP)の発現を抑制すると運動する細胞の極性が頑強になり、一方FilGAPの発現を抑制すると細胞の極性が失われることから、FilGAPBPはFilGAPと相互作用することで細胞内極性を制御する因子であることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究では微小管細胞骨格の翻訳後修飾であるグリシン化による微小管の多様性創出を明らかにすることを目的としていた。今年度の6月より所属先の変更に伴い研究計画の変更を余儀なくされ、当初の計画をすべて達成することは出来なかった。しかしながら新しい所属先における研究は本研究課題で目指す細胞骨格による細胞の形態制御、極性の形成の理解を目指すものである。さらに同定されたFilGAP結合タンパク質は細胞内極性の形成に重要な因子であることから、当初の計画とは変更したが、本研究の目的の達成には近づいたと言えるため、おおむね順調に進展していると評価した。本年度に同定することに成功した新規相互作用の解析により細胞生物学上の大きな問題である細胞極性制御機構の解明に貢献出来ることが期待出来る。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は単離したFilGAPBPとFilGAPの相互作用が細胞骨格を再編成することで細胞の形態、極性、運動を制御するか検証する。特にFilGAPBPとFilGAPの相互作用による細胞骨格の再編成による細胞極性制御機構に着目して解析を行う。FilGAPBP、FilGAPの発現抑制と過剰発現、そして発現抑制と過剰発現の組み合わせにより両者の細胞極性制御における役割を明らかにする。 1. 細胞極性形成 培養細胞でFilGAP、FilGAPBPを単独あるいは両者をともに発現抑制した時の運動する細胞の形態と極性(前方と後方の形成)をアクチン繊維など各種マーカーの染色により調べる。今年度の解析でFilGAPBPは非リン酸化型FilGAPと特異的に結合することが分かっている。非リン酸化型および擬似リン酸化型FilGAPを培養細胞に発現した時の細胞極性を調べ、その上でFilGAPBPの発現抑制をした時の影響を調べることでFilGAPとFilGAPBPの細胞極性形成シグナル伝達における上下関係を調べる。 2. 細胞運動 FilGAP、FilGAPBPの相互作用の細胞運動における役割を解析する。遺伝子の発現抑制、過剰発現時の細胞運動をタイムラプス顕微鏡で観察し、細胞の移動速度、運動の方向性を解析する。
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