2011 Fiscal Year Annual Research Report
小麦アレルギーの原因となるグリアジンをコードする遺伝子の同定
Project/Area Number |
22780006
|
Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
川浦 香奈子 横浜市立大学, 木原生物学研究所, 助教 (60381935)
|
Keywords | コムギ / 種子貯蔵タンパク質 / グリアジン / 小麦アレルギー / 発現遺伝子 |
Research Abstract |
コムギ種子貯蔵タンパク質であるグルテニンおよびグリアジンのアレルギーのエピトープとして報告されているアミノ酸配列をもとにペプチドを合成し、3種類のポリクローナル抗体を作製した。まず、抗体の特異性を調査するため、コムギ種子貯蔵タンパク質をコードする遺伝子が座乗する1群および6群の染色体異数体系統の種子を用いた。 完熟種子の胚乳から全タンパク質を抽出し、SDS-PAGEで分離後、作製した抗体による免疫プロットを行った。抗原・抗体反応量をイメージスキャナーにより測定したところ、3種の抗体それぞれで特異的な反応が確認できた。次に、アレルゲンの量が異なるコムギ系統を探索するため、約170系統の多様なコムギを入手し同様に免疫プロットを行った。3種の抗体それぞれで反応の程度が異なる系統を得ることができた。 抗体に反応するタンパク質とそのタンパク質をコードする遺伝子との関連を調査するため、α/β-グリアジン遺伝子を含むゲノミックBACクローンの約600kbの塩基配列を解析した。グリアジン遺伝子はゲノム中で高度に重複しているが、その重複の単位は一定ではないことが明らかになり、遺伝子の近傍にはレトロトランスポゾンやトランスポゾンが蓄積していることが示された。重複したグリアジン遺伝子コード領域およびその近傍の塩基配列の置換率から、ゲノム断片が重複した時期を推測した。さらに遺伝子の発現量を、ESTデータベースの配列の一致するESTの頻度から示した。これらの結果、比較的新しく重複したグリアジン遺伝子で既知のシス配列が同様であっても、遺伝子発現量が異なることが示唆された。 以上から、アレルゲンとなるコムギ種子貯蔵タンパク質は、コードする遺伝子の重複が頻繁に生じており、遺伝子発現量やタンパク質量に複雑な多様性をもたらしていることが明らかになった。
|