2010 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22780028
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Research Institution | Sapporo City University |
Principal Investigator |
上田 裕文 札幌市立大学, デザイン学部, 助教 (30552343)
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Keywords | 樹木層 / 森林利用 / 墓地 / 国土保全 / 里山 / ドイツ:日本 |
Research Abstract |
樹木葬墓地に焦点を当て、日本とドイツの比較研究を通して、社会が自然環境に求める新たな役割を考察することが本研究の目的である。 初年度は、両国の樹木葬墓地が誕生した社会的拝啓と全体像の整理を行った。文献調査およびヒアリング調査の結果から、ドイツでは「Friedwald(安らぎの森)」の概念がスイスより導入され、民間会社により統一したかたちで普及しているのに対し、日本では、一関市の祥雲寺に始まった「樹木葬」がさまざまに解釈され、多様な墓地形態を生み出していることが明らかになった。両国の樹木葬の最も大きな違いは、ドイツのFriedwaldが、林業や散策と共存する森林利用の一形態とされ、森林官によって一様に管理されるのに対し、日本の樹木葬が、墓地の一形態として認識され、寺院ごとに異なる方法で管理されている点である。さらに、日本の多様な樹木葬墓地の全体像を把握するため、ウェブ上で検索可能な樹木葬墓地を対象にその特徴を整理した。その結果、2011年3月現在で全国に合計28箇所の樹木葬墓地が確認され、(1)骨壺(2)人工物(3)樹木(4)土地形状の4つの観点からタイプ分けが可能であった。これらの全てのタイプの樹木葬に共通する特徴は、「遺骨が自然に還る」という点のみであり、契約者の多様なニーズに応えるかたちで、さまざまな樹木葬墓地の形態が存在することが明らかになった。しかしながら、約半数の12箇所の樹木葬墓地では、「里山」という言葉で樹木葬が紹介、説明されており、里山のイメージが最期の安住の地となる墓地選択に一定の影響を与えていることが示唆された。今後、樹木葬が里山保全や利用と結びつくかたちで、国土保全のひとつのあり方として定着する可能性は十分考えられると言える。
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