2011 Fiscal Year Annual Research Report
タンパク質添加による渋柿の脱渋メカニズムの解明と食品への応用
Project/Area Number |
22780031
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Research Institution | Shimane University |
Principal Investigator |
鶴永 陽子 島根大学, 教育学部, 准教授 (60517051)
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Keywords | カキ / タンニン / タンパク質 / タンニン-タンパク質複合体 / 抽出条件 / カキペースト |
Research Abstract |
島根県、鳥取県などで栽培されているカキ'西条'は、糖度が高く市場性が高い品種であるが、軟化が早いという欠点があるため、2割~3割程度が廃棄されている。渋柿の渋抜きにはドライアイス法などが用いられているが、脱渋後の加熱処理で渋戻り(復渋)する問題があることから加工品への利用が限定されている。また、渋柿には、強い抗酸化作用、抗アレルギー性などの機能性が認められるが、脱渋することでそれらの機能性が消失することが明らかにされている。そこで、本研究では、カキタンニンにタンパク質を添加する渋抜き法を用い、新しいタイプの渋柿加工品を開発することを目的とした。具体的には、加熱による復渋がないことと、食べるときは渋くなく、体内に入って機能性を発揮するカキタンニン含有食品である。 H23年度は、カキ'西条'について、脱渋処理の有無が、ペーストの性質に及ぼす影響について検討するとともに、カキタンニンと強固に結合するタンパク質素材を検索した。脱渋処理を行うことにより,ペーストのL^*値およびa^*値が低下し,pH,b^*値および彩度は上昇した.また,未脱渋ペーストは磨砕処理によって容易にペースト状にはなったものの,果肉同士の凝集および離水現象が認められた.次に、カキタンニンと強固に複合体を形成するタンパク質素材を検索した。未脱渋ペーストを搾渋して得られる渋エキスを用いて、各種タンパク質素材と複合体を形成させ、酸添加、加温により一般的に可溶性ポリフェノール分析の溶媒として用いる80%MeOHよりも強い条件下(1%HCl-MeOH(40℃、60℃、80℃))で抽出を行った。その結果ゼラチンおよびコラーゲンペプチドを用いて複合体形成をした場合1%HCl-MeOH(80℃)抽出においても複合体から全てのカキタンニンを完全には抽出できず、非常に強い複合体を形成していることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
本研究課題開始後のH23年1月に大学を変わったため、分析機器などを他機関に借りに行かねばならなくなり、データの取得がやや遅れている。
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Strategy for Future Research Activity |
機能性評価(美白効果、抗アレルギー活性)については評価に必要な設備がないため研究計画を変更する。当初は機能性評価を行うことにしていたが、当大学にある装置、もしくは近隣大学で借りることのできる測定装置で可能な抗酸化性のみの評価とする。そのかわり、カキタンニンと強く結合するタンパク種の検索に力を入れ、評価するタンパク質素材を大幅に増やすこととする。また、分取クロマトによる抽出液の分画を実施する予定であったが、現在の研究環境では難しいため、オープンカラムの装置を組み立てて、ゲル濾過分析を実施することとする。さらに、今年度はカキタンニン・タンパク質複合体形成を利用した、パン、洋菓子、和菓子類を製造する。
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Research Products
(1 results)