2010 Fiscal Year Annual Research Report
昆虫の摂食行動モチベーションを制御する新規ペプチド性因子群の追究と機能解析
Project/Area Number |
22780099
|
Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
永田 晋治 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 助教 (40345179)
|
Keywords | 昆虫 / 摂食行動 / カイコ / ペプチド / 摂食周期 |
Research Abstract |
平成22年度には、以下の通り、カイコを用いて昆虫の摂食行動モチベーションを制御する因子の同定とその機能解析を行った。 まず、カイコ幼虫体液より新規ペプチド性因子HemaP(Hemolymph major anionic peptide)を同定した。HemaPをカイコ幼虫に投与すると、摂食行動が惹起される。それとともに、食道下神経節のドーパミン量の消費がされた。このことは、絶食中のカイコ幼虫の各神経節中のドーパミンが消費されることや、摂食行動モチベーションが上昇時に、首振りなどに寄与する運動神経が食道下神経節に投射していること、などの先行研究と一致する。すなわち、HemaPは体液中で周期的に濃度変化することで、摂食行動モチベーションを調節しているということが明らかとなった。 次に、カイコ幼虫の腸管から、新規ペプチドGSRYアミドとアラトトロピンを同定した。空腹に調製したカイコ幼虫に、これらのペプチド類を皮下注射すると、活性化した摂食行動が顕著に阻害される。一方、short neuropeptide F (sNPF)を、カイコ幼虫に皮下注射すると、摂食行動の促進が認められた。 上記の通り、摂食行動を調節するペプチドをいくつか同定してきたが、これらのうちアラトトロピンとsNPFは、お互いが競合的に調節し合い、摂食行動の周期性を作っていると考えられた。このことは、カイコ幼虫体内で、アラトトロピン受容体が発現する部位にはsNPFの発現が、sNPF受容体が発現する部位にはアラトトロピンの発現が認められることでも確かめられた。さま、それらの発現量は、各種摂食状態で変動することも分かったので、さらなる発現解析を行っている。
|