2011 Fiscal Year Annual Research Report
台風撹乱に対する種特異的な応答を考慮した森林群集の遺伝資源の予測技術の開発
Project/Area Number |
22780136
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Research Institution | Hirosaki University |
Principal Investigator |
鳥丸 猛 弘前大学, 農学生命科学部, 助教 (10546427)
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Keywords | 遺伝的多様性 / 遺伝的構造 / 稚樹 / マイクロサテライト / 台風 / 自然撹乱 / 森林群集 / 森林生態 |
Research Abstract |
近年の急激な気候変動によって樹木個体群の死亡と加入過程の間の不均衡(非平衡状態)の程度は増大している。この現象により、これまで集団遺伝学が仮定してきた動的平衡にある個体群動態に基づく理論モデルでは樹木集団の保有する遺伝資源の程度を的確に予測できない可能性があり、今後の森林資源の保全のためには、自然現象の変動性を組み込んだより現実的な集団遺伝学モデルに基づく遺伝子動態の予測が課題となっている。本研究では、台風による撹乱を受けてきた冷温帯森林群集を対象に個体群統計学的調査と遺伝分析を行い、非平衡な個体群動態に基づく遺伝子動態モデルを開発し、台風撹乱体制が森林群集の遺伝的多様性に及ぼす影響を予測する。本年度は、固定調査区内に設定された50×50mのサブプロット内において、成木の空間構造と死亡動態の間た特徴的な関係性を示すブナ、ハウチワカエデ、ゴミネカエデの稚樹(樹高(H)≧30cmかつDBH<5cmの幹)の毎木調査を実施した。2005年と2011年に記録された林冠状態から林冠動態を把握した結果、ギャップの形成率が閉鎖率を大きく上回り、局所的な林冠の破壊が認められた。さらに、2009年と2011年に稚樹の毎木調査データを比較解析した結果、死亡率はコミネカエデ>ハウチワカエデ>ブナとなり、加入率はコミネカエデ=ブナ>ハウチワカエデであった。ハウチワカエデとコミネカエデでは幹・根元折れや落下物の下敷きなどの物理的損傷による死亡が多く、ブナでは立枯れによる死亡が多かった。以上から、本年度の調査・解析によって自然撹乱に対する種特異的な応答を検出することができた。一方、ヨーロッパアカマツの人工集団を例に生態データを組込んだ遺伝子流動モデルを開発し、自然集団の遺伝資源を予測する際に必要となる統計モデルの基盤を整理した。
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Research Products
(2 results)