2011 Fiscal Year Annual Research Report
Project/Area Number |
22780182
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
吉永 龍起 北里大学, 海洋生命科学部, 講師 (30406912)
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Keywords | シオミズツボワムシ / 複合種 / 分子系統 / 生活史特性 / 餌料生物 |
Research Abstract |
シオミズツボワムシBrachionus plicatilisは,海産仔稚魚の初期餌料生物として不可欠である.1960年代に餌料として用いられるようになって以来,体サイズによってL,S,SSの大きく分けて3種類が認知されてきた.一方,近年の分子生物学的手法の発達にともないツボワムシ属には遺伝的に異なる種が多く含まれることが明らかとなり,現在では複数種として扱われている.申請者は,形態的には差異がほとんどない種間で競争が起こり,これが増殖不良の原因となり得ることを明らかにした.本年は,実際に種苗生産の現場で使われているB.plicatilis L型の奄美株と小浜株の2株ついて,詳細に検討した.まず,ミトコンドリアDNAのCOI遺伝子座の配列を両株で比べたところ,演繹されたアミノ酸配列にも変異が認められた.また,奄美株は東アジア一帯に起源する株と,そして小浜株は北米(ネヴァダ)のものとそれぞれ近縁であることが分かった.続いて,両株の生活史特性と飢餓耐性を調べた.その結果,小浜株は相対的により若齢で繁殖を開始して寿命が短くなる生活史を持つことが明らかとなった.また,飢餓耐性は小浜株の方が低くなった.このことより,小浜株はr-戦略型,奄美株はK-戦略型の生活史に分類され,かつては同種とされたツボワムシ属は生活史特性が大きく異なる株によって構成されることが明らかとなった.また同時に,こうした生活史の違いが両株間で競合を引き起こし,増殖阻害の原因になっている可能性が示唆された.さらに,遺伝的に近い両株間で生活史には大きな違いが見られたことより,生活史進化のモデルとして有用と考えられた.
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Research Products
(3 results)