2011 Fiscal Year Annual Research Report
20世紀前半の帝国日本における水稲品種技術の社会的影響の研究
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22780202
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
藤原 辰史 東京大学, 大学院・農学生命科学研究科, 講師 (00362400)
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Keywords | 育種 / 磯永吉 / 品種改良 / 帝国日本 / ドイツ / 杉山龍丸 / 杉山茂丸 / 蓬莱米 |
Research Abstract |
平成23年度は、水稲品種の生産者・消費者・技術者の新品種受容に関する資料の収集および整理を行った。また、ヨーロッパからの育種技術の紹介がきわめて重要であることが判明したことと、科学技術の社会史の方法がヨーロッパ、とくにドイツで進んでいることから、ドイツでの文献調査を行なった。ベルリン大学の図書館や国立図書館で、育種学や科学史の基本的な情報を知ることができた。とくに20世紀前半のドイツでは、大農ではなく小農に有効な品種改良を目指した歴史があり、とくにドイツ育種学の研究者であるジョナサン・ハーウッド氏とコンタクトをとることによって、そのあたりについても知ることができた。 また、台湾において蓬莱米の社会的受容の史料を収集するため、国立台湾大学(旧帝国大学)付属図書館で、膨大な数にのぼる磯永吉文庫を調査し、重要な史料については、複写した。ここでは、これまで言及されることのなかった『磯永吉追悼集』を発見し、そこに寄稿している杉山龍丸という人物から、蓬莱米が戦後インドに渡っていること、さらに杉山龍丸の祖父が杉山茂丸で、彼の孫文とのネットワークが、台湾を農業研究拠点とする総督府のプロジェクトに結びついていたことを明らかにした。また、磯永吉が、フィリピンの調査(蓬莱米の移植が可能かについて)を陸軍の要請を受けて行っていたことを示す報告書を発見し、そこから、磯永吉と軍部のコネクションについても知ることができた。 さらに、本プロジェクトの最終目標である『帝国日本における水稲品種の技術社会史』執筆を予定より早めにスタートさせた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
おおむね、予定どおり、調査を実施することができた。ただし、品種改良のデータベースについては、農業技術研究機構作物研究所稲研究部の「イネ品種データベース」という詳細なデータベースが存在しているので、本研究では断念することにした。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は、データベース作成に使用するはずであった労力および資金を、史料収集費用にまわしたい。それによって、『帝国日本の品種改良』(仮)を執筆するさいの補足調査を行いたい。
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Research Products
(3 results)