2011 Fiscal Year Annual Research Report
脳梗塞部位にて好中球が発現するプロスタグランジンE合成酵素の役割の解析
Project/Area Number |
22790083
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Research Institution | Kitasato University |
Principal Investigator |
松尾 由理 北里大学, 薬学部, 講師 (10306657)
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Keywords | プロスタグランジンE_2 / プロスタグランジンE合成酵素 / 脳虚血 / 好中球 / 炎症 / ノックアウトマウス / 神経細胞死 / 興奮毒性 |
Research Abstract |
脳梗塞患者死後脳において、誘導型でプロスタグランジンE_2合成の末端酵素である、膜結合型プロスタグランジンE_2合成酵素(mPGES-1)が浸潤好中球にて発現することから、本研究では、好中球が発現するmPGES-1の脳虚血障害における役割の解明を試みた。In vivo脳虚血モデルにて、梗塞部位への浸潤好中球数は、野生型に比べ、mPGES-1欠損型マウスで有意かつ顕著に減少していた。また、in vitroの系においても、野生型マウスに比べmPGES-1欠損型マウス好中球では遊走活性が有意に低下していた。次に好中球が神経細胞の興奮毒性に及ぼす役割を神経-好中球共培養系にて解析した。海馬切片培養系においては、興奮毒性がmPGES-1欠損型マウスで軽減したが、好中球との共培養は成功しなかった。そこで、分散培養神経細胞を用いて腹腔好中球との共培養を行ったところ、野生型好中球を共培養すると神経細胞の生存が減少したが、mPGES-1欠損型好中球ではこの様な毒性作用は認められなかった。さらに、この系でグルタミン酸による興奮毒性を検討したところ、野生型好中球の共培養で認められた毒性は、mPGES-1欠損型好中球では顕著に抑制された。また、野生型好中球による毒性促進作用はCOX-2阻害薬によりmPGES-1欠損型と同程度まで抑制されたのに対し、mPGES-1欠損型好中球ではCOX-2阻害薬の作用は全く見られなかった。さらに、mPGES-1欠損型好中球にPGE_2を添加したところ、野生型と同程度の神経毒性が認められた。本研究より、好中球mPGES-1は脳虚血時の好中球の遊走を活性化し、梗塞部位への浸潤に寄与するだけでなく、PGE_2産生を介して神経細胞死を促進することで、脳虚血障害を増悪する可能性が示唆された。従って、好中球のmPGES-1は脳梗塞治療の有効なターゲットになり得るものと期待される。
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