2011 Fiscal Year Annual Research Report
革新的虚血性疾患治療薬の開発を目指した一酸化窒素運搬タンパク質の創製
Project/Area Number |
22790162
|
Research Institution | Kumamoto University |
Principal Investigator |
異島 優 熊本大学, 薬学部, 助教 (00457590)
|
Keywords | ヒト血清アルブミン / 一酸化窒素 / 虚血性疾患 / S-ニトロン化 / 臓器移植 / NOトラフィックタンパク質 / 遺伝子組換え / 虚血再灌流障害 |
Research Abstract |
本研究は、NOトラフィック製剤の創製と虚血性疾患、臓器移植への臨床応用のための有効性・実用性評価を最終目標とする。本年度は、前年度の評価において最も臓器保護作用が強力であったCys-34のS-ニトロン化アルブミンを大量に作製し、臓器移植時に引き起こされる冷阻血・温阻血の状況下にて、Cys-34のS-ニトロン化アルブミンが効果をもたらすか否かを検討した。具体的な方法は、冷阻血24時間や温阻血2時間、さらには、そのコンビネーションにおいて、Cys-34のS-ニトロン化アルブミン添加群と現在の臓器保存液の第一選択剤であるUniversity of Wisconsin液群で比較検討した。その結果、冷阻血時にはアポトーシスが、温阻血時にはネクロWisconsin液単独では、抗ネクローシス活性は示すものの、抗アポトーシス効果は見られなかったことを初めて明らかにした。また、興味深いことに、University of Wisconsin液へのCys-34のS-ニトロン化アルブミン添加により、著しい抗アポトーシス抑制を併せ持つバランスの取れた臓器保存液どなったことが、AST値評価や免疫組織学的評価から得られた。今回の結果は、絶妙に制御されたNOの放出能を有するCys-34のS-ニトロン化アルブミンの効果をin situ、in vitroにて評価したことに加え、冷阻血時でも抗酸化タンパク質であるHO-1が誘導することを初めて明らかにすることに繋がった。本研究は、今後脳死移植の増加に伴い、臓器保存時間の延長が望まれることが予想され、益々冷阻血時間か長くなることが懸念されている現在の臨床問題を解決する糸口に繋がる極めて重要な知見であると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
当初の計画では、ラットでのSNO-HSAの有用性評価をAST、ALT値を指標に行うことのみを検討していたが、本年度までに、AST、ALT値での評価はもちろんのこと、組織切片を用いた免疫組織学的評価や冷阻血・温阻血での細胞死のメカニズム解析を行えたことは、当初の計画以上に進展しているとの評価に値すると考えられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
冷阻血時や温阻血時、虚血・再灌流障害におけるSNO-HSAの有用性を見いだしてきたが、実際の肝移植モデルにおける有用性を見いだすことで、本研究は最終段階に移行できると考えられる。しがしながら、ラットにおける臓器移植モデルには、高度な技術と個体間での再現性を要するため、新たな技術を導入する必要性が生じる可能性がある。その対応策として、すでにラットにおける肝移植モデルの技術を持っている米国ピッツバーグ大学の移植外科チームとコンタクトをとっており、SNO-HSAの供給を行うこと、またはその技術の習得に短期留学をすることにより、この問題を克服できると思われる。
|
Research Products
(11 results)